Moleculus
有機化学リファレンス

Acetylation of Aniline

アニリンのアセチル化

求核アシル置換:アニリンのアセチル化(無水酢酸)→ アセトアニリド

全体式

出発物から生成物へ

+
基本形 General Form

反応の基本形

R–NH₂ + (R'CO)₂O → R–NH–CO–R' + R'COOH

酸無水物・室温(塩基共存も可)求核アシル置換(アミンのアシル化)

アミンが酸無水物のカルボニルを攻めてアシル化され、アミド(アセトアニリド類)になる求核アシル置換である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

求核付加:窒素がカルボニル炭素を攻撃(四面体中間体)

試薬・条件無水酢酸

123456791314151617181920
この段のあと
123456791314151617181920

アニリンの窒素N9の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。が、無水酢酸のカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。炭素C1を攻撃して新しいN9–C1結合を作る(A)。玉突きでC1=O2のπ電子が酸素O2へ降りてアルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。(O⁻)になる(B)。平面のカルボニルが四面体(sp3中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。になり、N9は正電荷(4結合)を帯びる。

Q.なぜ窒素が攻めるのか(酸素ではなく)

A.窒素は酸素より電気陰性度結合の電子対を引き寄せる強さの尺度。大きい原子ほど電子を引き、分極を生む。が低く孤立電子対を渡しやすい=より強い求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。だから。だからO–アシル化でなくN–アシル化が起こる。

Step2

脱離:酢酸イオンが抜けてアミド再形成

123456791314151617181920
この段のあと
123456791314151617181920

アルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。のO2⁻孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がC1=O2を再生し(B)、玉突きでC1–O4結合の電子がO4へ降りて酢酸イオン⁻O4を脱離させる(B, 脱離矢印)。四面体中間体カルボニルに求核剤が付き、炭素がsp3の四面体形になった中間体。が崩れ、プロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。アミド(N⁺)と酢酸イオンになる。

Q.なぜN側でなくO4側が抜けるのか

A.脱離基結合の電子対を持ったまま分子から抜けていく原子や原子団。抜けたあと安定なほど良い脱離基となる。の安定性で決まる。カルボキシラート(酢酸イオン)は共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。で安定な弱塩基=良い脱離基。一方アミドのN側を切ると不安定なアミドアニオンになり戻りにくい。だから酢酸イオンが抜ける。

Step3

脱プロトン(中性アミド=アセトアニリド)

試薬・条件酢酸イオン(塩基)

123456791314151617181920
生成物(完成)
123456791314151617181920

脱離した酢酸イオンO4⁻が、プロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。アミドのN–H(H13)を引き抜き(C)、N9–H13の結合電子が窒素N9へ戻って中性アミドになる(B)。これでアセトアニリドが完成し、酢酸が生じる。

考察

なぜこう進むのか

原理
選択性
Q.なぜアミド(C–N)ができて、エステル(C–O)に戻らないのか
A.反応性の序列が酸無水物>エステル>アミドで、より安定なアミドができる方向(不可逆寄り)に進む。脱離基の酢酸イオンはアニリンより弱い塩基=安定で、抜けやすい。
駆動力
活性なアシル供与体(無水物)から、共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。で安定なアミドへ。生じる酢酸イオンが良い脱離基で、平衡を生成物側へ引く。アニリンは弱い求核剤(孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。が環に非局在化)だが、無水酢酸が十分活性なので常温〜加温で進む。
関連 Related

近い反応・対になる反応

同じ中間体・対になる選択性・連続する変換など、位置の近い反応です。反応マップで全体の中での位置も見られます。

反応マップでこの周辺を見る →

検算 Verified

機構の正しさを機械で確かめる

この機構は機械検算を通過しています。

原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械で検証しています。妥当な経路は複数ありえます。

検算とは何か — 保証していないことも

検算の内訳を見る
矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全3段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C8H9NO
PubChem 照合緑・完全一致(CID 904)
N-phenylacetamide
← 反応一覧にもどる