Acetylation of Aniline
アニリンのアセチル化の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)
求核アシル置換:アニリンのアセチル化(無水酢酸)→ アセトアニリド
全体式
+→
反応機構(段ごと)
求核付加:窒素がカルボニル炭素を攻撃(四面体中間体)
試薬・条件: 無水酢酸
アニリンの窒素N9の孤立電子対が、無水酢酸のカルボニル炭素C1を攻撃して新しいN9–C1結合を作る(A)。玉突きでC1=O2のπ電子が酸素O2へ降りてアルコキシド(O⁻)になる(B)。平面のカルボニルが四面体(sp3)中間体になり、N9は正電荷(4結合)を帯びる。
Q.なぜ窒素が攻めるのか(酸素ではなく)
A.窒素は酸素より電気陰性度が低く孤立電子対を渡しやすい=より強い求核剤だから。だからO–アシル化でなくN–アシル化が起こる。
脱離:酢酸イオンが抜けてアミド再形成
アルコキシドのO2⁻孤立電子対がC1=O2を再生し(B)、玉突きでC1–O4結合の電子がO4へ降りて酢酸イオン⁻O4を脱離させる(B, 脱離矢印)。四面体中間体が崩れ、プロトン化アミド(N⁺)と酢酸イオンになる。
Q.なぜN側でなくO4側が抜けるのか
A.脱離基の安定性で決まる。カルボキシラート(酢酸イオン)は共鳴で安定な弱塩基=良い脱離基。一方アミドのN側を切ると不安定なアミドアニオンになり戻りにくい。だから酢酸イオンが抜ける。
脱プロトン(中性アミド=アセトアニリド)
試薬・条件: 酢酸イオン(塩基)
脱離した酢酸イオンO4⁻が、プロトン化アミドのN–H(H13)を引き抜き(C)、N9–H13の結合電子が窒素N9へ戻って中性アミドになる(B)。これでアセトアニリドが完成し、酢酸が生じる。
なぜこう進むのか
- 原理
- カルボン酸誘導体の反応は『求核剤が平面のカルボニル炭素に付いて四面体中間体を作り、最も安定な脱離基を吐き出して平面に戻る(付加–脱離)』の一型。アニリンの窒素が求核剤、無水酢酸のカルボニル炭素が求電子点、脱離基はカルボキシラート(酢酸イオン)。
- 選択性
- Q.なぜアミド(C–N)ができて、エステル(C–O)に戻らないのか
A.反応性の序列が酸無水物>エステル>アミドで、より安定なアミドができる方向(不可逆寄り)に進む。脱離基の酢酸イオンはアニリンより弱い塩基=安定で、抜けやすい。 - 駆動力
- 活性なアシル供与体(無水物)から、共鳴で安定なアミドへ。生じる酢酸イオンが良い脱離基で、平衡を生成物側へ引く。アニリンは弱い求核剤(孤立電子対が環に非局在化)だが、無水酢酸が十分活性なので常温〜加温で進む。
検算
この機構は機械検算を通過しています。
原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。
検算の内訳を見る
| 矢印⇄結合変化の整合 | 整合 | fail=0 / check=0(全3段) |
|---|---|---|
| 電荷保存 | 保存 | 全段で電荷保存 |
| 中間体の鎖の連続 | 連続 | 中間体の鎖が連続 |
| 生成物への到達(内部整合) | 到達 | 看板の生成物が機構の終着点に一致 |
| 生成物の分子式 | C8H9NO | |
| PubChem 照合 | 緑・完全一致 | 完全一致(CID 904) N-phenylacetamide |