Moleculusモレキュラス 一覧 / 塩化アシルの合成(SOCl2)

Acyl Chloride Synthesis with SOCl2

塩化アシルの合成(SOCl2)の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)

塩化アシル(酸塩化物)の合成:酢酸+塩化チオニル SOCl2 → 塩化アセチル+SO2+HCl

全体式

+

反応機構(段ごと)

段 1
カルボン酸OHが硫黄を攻撃(クロロスルフィット化・OHの脱離基化)
試薬・条件: SOCl2(塩化チオニル)
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酢酸のOH酸素O4の孤立電子対が、塩化チオニルの硫黄S10を攻撃して新しいO4–S10結合を作る(A)。玉突きでS10–Cl13の結合電子が塩素Cl13へ移り、Cl⁻が脱離する(B, 脱離矢印)。O4はいま3結合+正電荷(クロロスルフィット中間体のプロトン化型)。この段でカルボン酸のOHが『硫黄のついた良い脱離基』に付け替わる。

Q.なぜカルボン酸のOHをわざわざ硫黄に付け替えるのか

A.OHのままだと脱離基として悪い(O4が抜けるときOH⁻という強い塩基になり抜けにくい)から。硫黄をつけてクロロスルフィット(–O–S(=O)Cl)にすると、あとでSO2とCl⁻へ壊れて抜ける『良い脱離基』に変わる。これがSOCl2を使う理由。

段 2
脱プロトン(中性クロロスルフィット)
試薬・条件: Cl⁻(前段で生じた塩化物イオンが塩基)
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塩化物イオンCl13がO4⁺上のプロトンH5を引き抜き(C)、O4–H5の結合電子が酸素O4へ戻って中性のクロロスルフィット中間体(CH3–CO–O–S(=O)Cl)になる(B)。抜けたプロトンはCl13と結びついてHClになる。電荷を消し、次にCl⁻がカルボニルを攻撃できる中性体を整える。

段 3
Cl⁻がカルボニル炭素を攻撃(四面体中間体の生成)
試薬・条件: Cl⁻(求核剤)
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塩化物イオンCl20の孤立電子対が、カルボニル炭素C2を攻撃して新しいC2–Cl20結合を作る(A)。玉突きでC2=O3のπ電子が酸素O3へ降りてアルコキシド(O⁻)になる(B)。C2は4結合の四面体中間体になる。カルボニル炭素は電子求引性のO–S基が付いてδ⁺が強く、求核剤Cl⁻の攻撃を受けやすい。

Q.なぜCl⁻がカルボニル炭素を攻撃できるのか

A.カルボニル炭素C2は、酸素二つ(=O3とO4–S)に挟まれて電子が引かれδ⁺が強い求電子点だから。そこへ求核剤のCl⁻が付加し、π電子をO3へ逃がして四面体中間体になる。これが求核アシル置換の前半(付加)。

段 4
脱離基の脱離(塩化アシル完成・SO2とCl⁻の放出)
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アルコキシドO3の孤立電子対がC2=O3のカルボニルを再生し(B)、玉突きでC2–O4の結合電子が脱離基側(O4)へ移ってO4–S10基が抜ける(B, 脱離矢印)。抜けたクロロスルフィット部分はそのままSO2へ壊れ(O4–S10がπ結合を作り(B)、S10–Cl12が切れてCl⁻を放つ(B, 脱離矢印))、二酸化硫黄SO2と塩化物イオンCl⁻になる。四面体中間体が壊れて塩化アセチル(CH3COCl)が完成する。

Q.なぜO–S基(クロロスルフィット)が脱離できるのか、なぜ塩素が炭素に残るのか

A.O–S基(クロロスルフィット)は抜けると同時にSO2(気体)とCl⁻に不可逆に壊れるので、脱離基として非常に優秀だから。SO2が系外へ抜けることが駆動力になる。四面体中間体にはClとクロロスルフィット基が付いているが、この比較ではクロロスルフィット側が圧倒的に抜けやすい(Cl⁻自体も良い脱離基だが、気体を放出して戻れなくなる脱離には敵わない)。だからClが炭素に残り、塩化アシルが立つ。

なぜこう進むのか

原理
カルボン酸のOHは、そのままでは脱離基として悪い(OH⁻は強い塩基=抜けにくい)。SOCl2はこのOHを『クロロスルフィット(–O–S(=O)Cl)』に付け替え、良い脱離基(最終的にSO2とCl⁻へ壊れる基)に変える活性化剤。良い脱離基にしたうえで、Cl⁻がカルボニル炭素へ付加–脱離(求核アシル置換)して塩化アシルができる。
選択性
Q.なぜ塩化アシルまで一気に進むのか(途中で止まらないのか)
A.脱離基がSO2とCl⁻という気体・小分子へ不可逆に壊れるので、平衡が生成側へ引かれるから。SO2が系外へ抜けることが強い駆動力になり、酸塩化物という『反応性の高い(=ふつうは作りにくい)誘導体』まで登れる。
駆動力
律速はOHの脱離基化(クロロスルフィット化)。いったん良い脱離基になれば、Cl⁻の付加–脱離は速い。全体はSO2の脱離(不可逆・気体化)で駆動される。四面体中間体で抜けるのはCl⁻ではなくクロロスルフィット基:抜けた瞬間にSO2(気体)とCl⁻へ壊れて系外に出るぶん、単なるCl⁻の脱離より圧倒的に有利だから。結果としてClがカルボニルに残り、塩化アシルになる。

検算

この機構は機械検算を通過しています。

原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。

検算の内訳を見る
矢印⇄結合変化の整合整合fail=0 / check=0(全4段)
電荷保存保存全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達看板の生成物が機構の終着点に一致
生成物の分子式C2H3ClO
PubChem 照合緑・完全一致完全一致(CID 6367)
acetyl chloride
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