Acidic Amide Hydrolysis
アミドの酸性加水分解の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)
酸性アミド加水分解:p-ニトロアセトアニリド → p-ニトロアニリン+酢酸
全体式
反応機構(段ごと)
カルボニル酸素O6の孤立電子対がヒドロニウムのプロトンH41を奪い(C)、O40–H41電子がO40へ戻って水になる(B)。プロトン化でC5の求電子性が上がり、水の付加を受けやすくなる(カルボニル基の活性化)。
水O30の孤立電子対がカルボニル炭素C5を攻撃(A)、C5=O6のπ電子がO6へ降りて中性のOHになる(B)。C5が四面体(sp3)になり、付加した水酸素O30は正電荷(オキソニウム)を帯びる。
水O40がオキソニウムO30⁺のプロトンH32を引き抜き(C)、O30–H32電子がO30へ戻って中性のOHになる(B)。C5上にOHが2つと窒素が付いた中性の四面体中間体(ジェミナルなジオール–アミン型)になる。
窒素N8の孤立電子対がヒドロニウムのプロトンH44を奪い(C)、O40–H44電子がO40へ戻る(B)。N8が正電荷を帯び、C–N結合が切れたとき中性アミン(弱塩基)として抜けられる=良い脱離基に変わる。これが酸性加水分解の要。
Q.なぜ窒素をプロトン化する必要があるのか
A.中性のアミドアニオン(R2N⁻)は強塩基=悪い脱離基で、そのままでは抜けない。プロトン化して中性アミンにすれば、安定な分子として脱離できる。脱離の良し悪しを酸で作り込んでいる。
OH酸素O6の孤立電子対がC5=O6の二重結合を作りに行き(B)、玉突きでC5–N8結合の電子がN8へ降りて、p-ニトロアニリンが中性アミンとして脱離する(B, 脱離矢印)。C5側はプロトン化された酢酸(–C(=O⁺H)–OH)になる。
水O40がプロトン化酢酸のO6⁺上のプロトンH41を奪い(C)、O6–H41電子がO6へ戻って中性の酢酸になる(B)。プロトン化で借りた酸(H3O⁺)がここで再生=酸は触媒。最終的に p-ニトロアニリンと酢酸が得られる。
なぜこう進むのか
- 原理
- アミドはカルボン酸誘導体で最も反応性が低い(共鳴で安定)。だから加水分解には酸(または塩基)と加熱が要る。酸性機構の骨格は『カルボニルをプロトン化して活性化→水が付加して四面体中間体→窒素をプロトン化して良い脱離基にする→C–N開裂でアミンを追い出す』。アセチル基を外して保護を解く操作(先に付けたアセチル保護の除去)。
- 選択性
- Q.なぜ N 側(アミン)が抜けて、O 側(酢酸)が残る向きに進むのか
A.四面体中間体からどちらが抜けるかは脱離基の良さで決まる。窒素をプロトン化して –NH2Ar⁺ にすれば中性アミン(弱塩基)として抜けられる。一方カルボニル酸素側は再びC=Oに戻る方が安定。だから C–N が切れて酢酸とアニリンに分かれる。 - 駆動力
- 大過剰の水と加熱で平衡を加水分解側へ。生成した p-ニトロアニリンは後で塩基で遊離させて単離する。前提:本機構は酸性(希H2SO4/H2O還流)での加水分解として描いた(塩基性NaOHでも進むが機構は別)。
検算
この機構は機械検算を通過しています。
原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。
検算の内訳を見る
| 矢印⇄結合変化の整合 | 整合 | fail=0 / check=0(全6段) |
|---|---|---|
| 電荷保存 | 保存 | 全段で電荷保存 |
| 中間体の鎖の連続 | 連続 | 中間体の鎖が連続 |
| 生成物への到達(内部整合) | 到達 | 看板の生成物が機構の終着点に一致 |
| 生成物の分子式 | C6H6N2O2 | |
| PubChem 照合 | 緑・完全一致 | 完全一致(CID 7475) 4-nitroaniline |