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Claisen Condensation

クライゼン縮合の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)

Claisen 縮合:酢酸エチル 2分子 + NaOEt(ナトリウムエトキシド)→ アセト酢酸エチル(β-ケトエステル)。一方のエステルから生じたエステルエノラートが、もう一方のエステルのカルボニル炭素に求核付加し、四面体中間体から OEt⁻ が脱離して β-ケトエステルを与える C-アシル化。生成物の酸性 α-H が塩基でさらに引き抜かれて安定なエノラートになることが平衡を引く駆動力。

全体式

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反応機構(段ごと)

段 1
α-H の脱プロトン(エステルエノラートの生成)
試薬・条件: NaOEt(エトキシド EtO⁻)
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エトキシド O20 の孤立電子対が、酢酸エチルのα炭素C1 上のプロトンH23 を引き抜く(C)。玉突きで C1–H23 の結合電子が C1–C2 の間へ移ってπ結合をつくり(B)、さらに C2=O3 のπ電子が酸素O3 へ降りて負電荷を持つ(B)。α炭素の負電荷がカルボニル酸素へ共鳴で逃げた形=エステルエノラートができ、エトキシドは中性のエタノールになる。

Q.なぜ、このα-H(C1 のH)が引き抜かれるのか

A.α炭素C1 は隣のカルボニル C2=O3 の電子求引を受けているため、その C–H の酸性度が高い(pKa ≈ 25)。引き抜いてできる負電荷が、カルボニル酸素O3 へ共鳴で分散して安定化する(エノラート)ので、他の位置の C–H より優先して脱プロトンされる。

段 2
エノラートの求核付加(四面体中間体の生成)
試薬・条件: 酢酸エチル(2分子目・求電子剤)
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エステルエノラートの求核性α炭素C1 が、2分子目の酢酸エチルのカルボニル炭素C11 を攻撃して新しい C1–C11 結合をつくる(A)。同時にエノラートの C1=C2 π電子が C2=O3 側へ戻ってカルボニルが復活し(B)、攻撃を受けた C11=O12 のπ電子は酸素O12 へ降りてアルコキシドになる(B)。炭素どうしが結ばれ、C11 は 4本の単結合を持つ四面体中間体(アルコキシド)になる。

Q.エノラートはなぜ酸素でなく炭素(C1)で結合をつくるのか、どこを攻めるのか

A.エノラートは負電荷が酸素O3 と炭素C1 に非局在化しているが、新しい炭素−炭素結合をつくる C-アシル化では求核部位として働くのは炭素C1 側。相手のカルボニル炭素C11 は酸素にはさまれてδ⁺(電子が薄い求電子点)なので、そこへ C1 が付加する。これが Claisen 縮合の C–C 結合形成の本体。

段 3
エトキシドの脱離(β-ケトエステルの生成)
試薬・条件: —(付加–脱離の脱離段)
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四面体中間体のアルコキシド酸素O12 の孤立電子対が C11–O12 の間に二重結合を作りに戻り(A)、玉突きで C11–O13 の結合電子が酸素O13 へ降りてエトキシド OEt⁻ が脱離する(B, 脱離矢印)。カルボニル C11=O12 が復活し、C1 を橋にして 2つのカルボニル(C2=O3 のエステルと C11=O12 のケトン)を持つ β-ケトエステル=アセト酢酸エチルの骨格ができる。

Q.なぜ OEt⁻ が抜けて、付加してきた炭素(エノラート)側が抜けないのか

A.四面体中間体からは付加してきた炭素求核剤か OEt のどちらかが脱離しうるが、抜けたあとの共役塩基が安定なほうが脱離基として優れる。OEt⁻(共役酸エタノール pKa≈16)は炭素上に負電荷を持つエノラートより安定なので優先して抜け、炭素−炭素結合が残る。これで求核アシル置換(付加–脱離)が完結し β-ケトエステルへ進む。

段 4
β-ケトエステルの脱プロトン(安定エノラート化=平衡の駆動力)
試薬・条件: NaOEt(エトキシド EtO⁻)
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エトキシド O20 が、2つのカルボニル(C2=O3 と C11=O12)に挟まれた C1 の α-H(H24)を引き抜く(C)。玉突きで C1–H24 の結合電子が C1–C11 の間へ移ってπ結合をつくり(B)、C11=O12 のπ電子が酸素O12 へ降りて負電荷を持つ(B)。生成物のエノラートは負電荷が両側のカルボニル酸素へ非局在化できるため非常に安定で、この段が平衡を生成側へ引く。最後に酸(H3O⁺)で中和すると中性のアセト酢酸エチルが得られる。

Q.なぜこの脱プロトンが Claisen 縮合を成立させる駆動力になるのか

A.C1 の α-H は 2つのカルボニルに挟まれて pKa ≈ 11 と、出発エステルの α-H(pKa ≈ 25)よりはるかに酸性。塩基(EtO⁻)でほぼ完全に引き抜かれ、負電荷が両カルボニル酸素へ分散した安定エノラートに落ちる。この不可逆に近い脱プロトンで β-ケトエステルが系から抜かれ続けるため、ルシャトリエの原理で C-アシル化の平衡(それ自体は出発側寄り)が生成側へ引かれる。だから塩基は最低 1 当量必要。

なぜこう進むのか

原理
エステルのα炭素は、隣のカルボニルの電子求引で酸性度が上がっている(α-H の pKa ≈ 25)。塩基(エトキシド EtO⁻)がこのα-H を引き抜くとエステルエノラート(α炭素上の負電荷がカルボニル酸素へ共鳴で逃げて安定)ができる。このエノラートの求核性α炭素が、もう1分子のエステルのカルボニル炭素(δ⁺の求電子点)に付加して四面体中間体を作り、そこから脱離基のエトキシド OEt⁻ が押し出されて(付加–脱離=求核アシル置換)、炭素どうしが新しく結合した β-ケトエステル(アセト酢酸エチル)になる。生成した β-ケトエステルは 2つのカルボニルに挟まれた α-H を持ち、これがさらに塩基で引き抜かれて非常に安定なエノラートになる。最後に酸(H3O⁺)で中和して中性のアセト酢酸エチルを得る。
選択性
Q.なぜ、いったんできた四面体中間体からアルコキシド(OEt⁻)が抜けて、逆にエノラート(もとの求核剤)が抜けて出発物へ戻らないのか
A.四面体中間体の炭素には脱離できる基が 2種ある:付加してきたエステルエノラート(炭素求核剤)と、もとから付いていた OEt。どちらが抜けるかは共役塩基の安定性(脱離能)で決まる。OEt⁻(エトキシド、共役酸エタノールの pKa ≈ 16)は、炭素上に負電荷を持つエノラートよりも脱離基として抜けやすいので、OEt⁻ が優先的に脱離して炭素−炭素結合が残り、β-ケトエステルへ進む。
駆動力
Claisen 縮合の各段(脱プロトン・付加・脱離)はいずれも可逆で、C-アシル化までの平衡はむしろ出発側に寄っている。反応を生成側へ引くのは最後の脱プロトン:できた β-ケトエステルの α-H は 2つのカルボニルに挟まれて pKa ≈ 11 と、出発エステルの α-H(pKa ≈ 25)よりはるかに酸性なので、塩基(EtO⁻)でほぼ完全に引き抜かれて安定なエノラートに落ちる。この不可逆に近い脱プロトンで β-ケトエステルが系から抜かれ続けるため、ルシャトリエの原理で全体の平衡が縮合生成物側へ引かれる。だから塩基は触媒量ではなく最低 1 当量必要で、反応後に酸で中和して中性の生成物を取り出す。

検算

この機構は機械検算を通過しています。

原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。

検算の内訳を見る
矢印⇄結合変化の整合整合fail=0 / check=0(全4段)
電荷保存保存全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達看板の生成物が機構の終着点に一致
生成物の分子式C6H10O3
PubChem 照合緑・完全一致完全一致(CID 8868)
ethyl 3-oxobutanoate
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