Moleculus
有機化学リファレンス

Cycloheptatriene-Norcaradiene Valence Tautomerism

シクロヘプタトリエン⇄ノルカラジエンの原子価互変異性

6π電子環状閉環(熱):シクロヘプタ-1,3,5-トリエン →(加熱)→ ノルカラジエン。シクロヘプタトリエン⇄ノルカラジエンの原子価互変異性

全体式

出発物から生成物へ

基本形 General Form

反応の基本形

シクロヘプタ-1,3,5-トリエン ⇌ ノルカラジエン(6π電子環状)

加熱(速い平衡)電子環状反応(原子価互変異性)

シクロヘプタトリエンとノルカラジエンが6π電子環状の開閉で行き来する原子価互変異性である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

協奏的6π電子環状閉環(3πが環状に同時移動して新σ+ジエンへ)

試薬・条件—(加熱)

1234567
生成物(完成)
1234567

シクロヘプタトリエンのトリエン部(C1=C2–C3=C4–C5=C6)の6π電子が、CH2橋C7を残したまま環状に同時に動く。3本の矢印:(1) 末端の二重結合C1=C2のπ電子が回り込んで、トリエンのもう一方の末端C6との間に新しいσ結合C1–C6を作る(B)。これでC1・C6・C7の三員環(シクロプロパン)ができる。(2) 中央のπC3=C4が片側へ移って新しい二重結合C2=C3を作る(B)。(3) 末端のπC5=C6が逆側へ移ってC4=C5を作る(B)。結果、7員環がビシクロ[4.1.0]骨格(ノルカラジエン)に変わり、残ったジエンはC2=C3–C4=C5になる。

Q.なぜ中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。を経ず1段(協奏的複数の結合の切断と生成が、中間体を経ずに一度に同時に起こるさま。)で閉じるのか

A.6π電子が環状に巡る芳香族的な遷移状態結合が切れかけ・できかけの、エネルギーが最も高い一瞬の状態。取り出すことはできない。(ヒュッケル型・位相一周で偶数の節)を通れるから。3本のπの6電子が同位相で重なり、熱で許容されるディスロタトリーの回旋で両末端炭素が回りながら新σができπが組み替わる。カチオン・ラジカル不対電子を1つ持つ、反応性の高い化学種。電荷を持たないことが多い。中間体を作るより低障壁で、CHT⇄NCDの速い平衡になる。

考察

なぜこう進むのか

原理
電子環状反応は、共役二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。ポリエンの両末端炭素どうしがσ結合を作って(または開いて)閉じる協奏的複数の結合の切断と生成が、中間体を経ずに一度に同時に起こるさま。ペリ環状反応電子が環状に動き、1つの遷移状態で協奏的に進む反応。。シクロヘプタトリエン(CHT)はsp3のCH2橋(C7)を1つ持つ7員環で、残りの6炭素が直鎖トリエン(C1=C2–C3=C4–C5=C6)として並ぶ。この6π電子系が環状に同時に動いて、トリエン両端C1–C6間に新しいσ結合ができると、橋C7とあわせてシクロプロパン環ができ、二環式のノルカラジエン(NCD・ビシクロ[4.1.0]ヘプタジエン)になる。CHT⇄NCDは中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。を経ない速い平衡(原子価互変異性プロトンの移動と二重結合の組み替えで、ケト形とエノール形が行き来する現象。)で、通常はCHT側に大きく偏る。
選択性
Q.なぜ熱条件でディスロタトリー(対旋電子環状反応で、両末端の炭素が互いに逆向きに回転して環を閉じる・開く様式。)に閉じるのか
A.6π電子の熱的電子環状反応は、軌道対称則(Woodward–Hoffmann)でディスロタトリー(対旋)が許容。基底状態のHOMO(ψ3)は両末端ローブの位相が同符号どうしで向き合うので、両末端炭素が逆向きに回って(対旋)同位相で重なれば結合性のσができる。コンロタトリー電子環状反応で、両末端の炭素が同じ向きに回転して環を閉じる・開く様式。(同旋)だと反位相が重なり反結合性になるので熱では禁制。これが両末端炭素C1・C6の回り方(置換基があればその立体配置)を一意に決める。
駆動力
CHT⇄NCDは熱力学的にはCHT(共役トリエン側)がふつう安定で平衡はCHT寄り。NCD側へ進む駆動力はシクロプロパン形成による新σ結合だが、環ひずみと共役の喪失で釣り合う=速い平衡。協奏的なので電荷・ラジカル不対電子を1つ持つ、反応性の高い化学種。電荷を持たないことが多い。中間体を経ず立体特異的出発物の立体配置に応じて、生成物の立体が一義的に決まる性質。に進む。
軌道

フロンティア軌道で見る

シクロヘプタトリエン⇄ノルカラジエンも6π電子系の電子環状反応で、熱=逆旋的に従う。図は鎖状6π系の基本例(トリエンの閉環)。

シクロヘプタトリエン⇄ノルカラジエンも6π電子系の電子環状反応で、熱=逆旋的に従う。図は鎖状6π系の基本例(トリエンの閉環)。

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電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C7H8
PubChem 照合緑・完全一致(CID 12561986)
bicyclo[4.1.0]hepta-2,4-diene
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