Moleculus
有機化学リファレンス

Fischer Esterification

フィッシャーエステル化

Fischer エステル化:酢酸 + エタノール、酸触媒(H⁺)→ 酢酸エチル + 水。酸触媒下のカルボン酸とアルコールの縮合(可逆平衡)。

全体式

出発物から生成物へ

+
基本形 General Form

反応の基本形

R–COOH + R'OH ⇌ R–CO–OR' + H₂O

酸触媒(H₂SO₄ など)・アルコール過剰・脱水(可逆平衡)求核アシル置換(エステル化)

酸触媒下でカルボン酸とアルコールが縮合し、エステルと水になる可逆反応である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

カルボニルのプロトン化(酸による活性化)

試薬・条件H⁺(酸触媒)

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この段のあと
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酢酸のカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。酸素O2の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。が、酸(ヒドロニウム)のプロトンH6を受け取る(C)。玉突きでO7–H6の結合電子が酸素O7へ戻って水になる(B)。カルボニルがプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。され、炭素C1がより強い求電子点(オキソカルベニウム性)になる。

Q.なぜ先に酸でカルボニルをプロトン化するのか

A.プロトン化するとC=Oの炭素がより強くδ⁺(オキソカルベニウム性)になり、中性で弱い求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。のアルコールでも付加できるようになるから。これが酸触媒酸が反応を助け、最後には再生される仕組み。基質をプロトン化して反応しやすくする。の前半の役割。

Step2

アルコールの付加(四面体中間体の生成)

試薬・条件エタノール

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この段のあと
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エタノールの酸素O10の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。が、活性化されたカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。炭素C1を攻撃して新しいO10–C1結合を作る(A)。玉突きでC1=O2⁺のπ電子が酸素O2へ降りて中性のOHになる(B)。C1は3つの酸素が付いた四面体炭素になり、付加したO10が正電荷を帯びる。

Q.なぜカルボニル炭素に付加が起こるのか(どこを攻めるのか)

A.カルボニル炭素C1は酸素との二重結合+プロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。でδ⁺(電子が薄い)=求電子点だから。求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。であるアルコール酸素の孤立電子対がこの電子の薄い炭素を攻める。これが求核アシル置換カルボニルに求核剤が付いてから脱離基が抜け、正味で置換になる二段の型。の『付加』の段。

Step3

プロトン移動(付加したO⁺→脱離させたいOHへ)

試薬・条件H2O(プロトンの受け渡し)

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この段のあと
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水が、付加した酸素O10⁺の上のプロトンH11を引き抜く(C)。玉突きでO10–H11の結合電子が酸素O10へ戻り、O10は中性のエーテル型酸素(–OEt)になる(B)。これで正電荷が消え、C1には中性の–OH(O2, O3)が2つと–OEt(O10)が付いた中性四面体中間体カルボニルに求核剤が付き、炭素がsp3の四面体形になった中間体。になる。次にこの–OHの一方をプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。して脱離基結合の電子対を持ったまま分子から抜けていく原子や原子団。抜けたあと安定なほど良い脱離基となる。にする準備。

Step4

OHのプロトン化(脱離基=水にする)

試薬・条件H⁺(酸触媒)

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この段のあと
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四面体中間体カルボニルに求核剤が付き、炭素がsp3の四面体形になった中間体。の一方の–OH(酸素O3)が、酸からプロトンH30を受け取る(C)。玉突きでO31–H30の結合電子が酸素O31へ戻って水になる(B)。O3が–OH3⁺すなわち–OH2⁺型(良い脱離基結合の電子対を持ったまま分子から抜けていく原子や原子団。抜けたあと安定なほど良い脱離基となる。=水)に変わり、脱水の準備が整う。

Q.なぜ–OHをそのまま抜かず、わざわざプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。するのか

A.–OH(水酸化物として抜ける形)はO⁻の共役塩基酸が水素イオン(H⁺)を1つ手放したあとに残る化学種。安定なほど元の酸は強酸である。が強塩基で脱離基として悪い。プロトン化して–OH2⁺にすると、抜けたあとが中性の水(弱塩基)になり、良い脱離基になるから。脱離能の序列でも、共役二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。酸のpKaが低い(=抜けたあとが安定)ほど脱離しやすい。

Step5

水の脱離(プロトン化エステルの生成)

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この段のあと
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隣の酸素O2の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がC1–O2の間に二重結合を作りに行き(A)、玉突きでC1–O3⁺の結合電子がO3へ降りて水が脱離する(B, 脱離矢印)。C1=O2⁺のプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。エステル(オキソカルベニウム)になる。酸素O2が隣接炭素の正電荷を電子対で安定化できるので、良い脱離基結合の電子対を持ったまま分子から抜けていく原子や原子団。抜けたあと安定なほど良い脱離基となる。化した水を押し出せる。

Q.なぜ–OEtでなく水(もとの–OH由来)が脱離するのか

A.この段でプロトン化されて–OH2⁺(良い脱離基=水)になっているのはO3側だから。–OEtのO10は中性のエーテル酸素で脱離基として悪い。プロトン化で選ばれた側だけが抜け、残ったO10がエステルのC–O–Cになる。もし逆にO10側がプロトン化されて抜ければ出発物(酢酸)へ戻る=これが可逆性の実体。

Step6

脱プロトン(中性エステルの完成・触媒再生)

試薬・条件H2O(塩基)

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生成物(完成)
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水がプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。エステルのカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。酸素O2⁺の上のプロトンH6を引き抜き(C)、O2–H6の結合電子が酸素O2へ戻って中性のC=O(エステル)になる(B)。酢酸エチル(CH3CO–OEt)が完成し、触媒反応を速めるが、自身は反応の前後で消費されず再生される物質。の酸(ヒドロニウム)が再生される。全6段はどれも可逆で、水を除くと平衡が生成側へ寄る。

考察

なぜこう進むのか

原理
カルボン酸+アルコールが酸触媒酸が反応を助け、最後には再生される仕組み。基質をプロトン化して反応しやすくする。で脱水縮合してエステルになる求核アシル置換カルボニルに求核剤が付いてから脱離基が抜け、正味で置換になる二段の型。(付加–脱離)。カルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。をまず酸でプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。して炭素をより強い求電子点にし(弱い求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。のアルコールでも付加できる)、アルコール酸素がカルボニル炭素に付加して四面体中間体カルボニルに求核剤が付き、炭素がsp3の四面体形になった中間体。を作る。プロトンの付け替えで元の–OHを–OH2⁺(=良い脱離基結合の電子対を持ったまま分子から抜けていく原子や原子団。抜けたあと安定なほど良い脱離基となる。の水)に変え、水が脱離してプロトン化エステル(オキソカルベニウム)になり、最後に脱プロトン分子が水素イオン(H⁺)を塩基に引き抜かれて手放す操作。プロトン化の逆である。して中性のエステルと触媒反応を速めるが、自身は反応の前後で消費されず再生される物質。の酸が再生する。全段が可逆で、酸はどこでも消費されず再生される真の触媒。
選択性
Q.なぜ酸触媒が必要なのか(触媒なしではなぜ進みにくいのか)
A.中性のアルコールは弱い求核剤で、中性カルボニル炭素のδ⁺も弱いので、そのままでは付加が遅い。酸でカルボニル酸素をプロトン化すると炭素の正電荷性(オキソカルベニウム性)が増して求電子性が上がり、弱いアルコールでも攻撃できるようになる。同じく脱離段でも–OHのままでは抜けないが、プロトン化して–OH2⁺(水)にすれば良い脱離基になる。酸は付加と脱離の両方を助け、最後に再生されるので触媒量でよい。
駆動力
各素反応は可逆で、反応全体も平衡(縮合=可逆平衡)。だから駆動力は熱力学的な偏りではなく、ルシャトリエの原理で平衡を生成側へ寄せることで得る=(1)アルコールを大過剰に使う、(2)生成する水を系外へ除く。逆反応(酸性加水分解)はまったく同じ経路を逆向きに辿るので、水を加えて過剰にすればエステルはカルボン酸へ戻る。
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矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全6段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
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生成物の分子式C4H8O2
PubChem 照合緑・完全一致(CID 8857)
ethyl acetate
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