Friedel-Crafts Alkylation
フリーデル・クラフツアルキル化の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)
Friedel–Craftsアルキル化:1,4-ジメトキシベンゼン+t-ブチルアルコール(濃H2SO4)→ t-ブチル基の導入(1回分)
全体式
++→
反応機構(段ごと)
t-ブチルカチオン生成① アルコールのプロトン化
試薬・条件: H2SO4
t-ブチルアルコールのOH酸素O5の孤立電子対が硫酸のプロトンH35を奪い(C)、O30–H35電子がO30へ戻りHSO4⁻になる(B)。–OHが–OH2⁺(良い脱離基=水)に変わる。
t-ブチルカチオン生成② 水が脱離
C1–O5結合の電子がO5へ降りて水が脱離する(B, 脱離矢印)。第3級カルボカチオン(t-ブチルカチオン)が生じる。3級は超共役と誘起効果で安定なので生成しやすく、転位しない。
求電子付加:環がt-ブチルカチオンを攻撃(アレニウム・律速)
試薬・条件: t-Bu⁺
1,4-ジメトキシベンゼンの環π電子(C10=C11)がt-ブチルカチオンの炭素C1を攻撃して新しいC11–C1結合を作る(A)。環は芳香族性を失い、正電荷がOMeの付いたC10(オキソカルベニウムとして強く安定化されるo/p位)に乗ったアレニウムになる。芳香族性を壊すこの段が律速。
Q.なぜカチオン側に2つ目の矢印が要らないのか
A.求電子剤が裸のカルボカチオン(空のp軌道)だから。ニトロ化のNO2⁺のように内部のπを組み替える必要がなく、環のπがそのまま空軌道へ入って1本の矢印で済む。
脱プロトンで再芳香族化(モノt-ブチル体)
試薬・条件: HSO4⁻(塩基)
塩基HSO4⁻がsp3炭素C11のH25を引き抜き(C)、C11–H25の結合電子が環に戻ってC10=C11を再生する(B)=再芳香族化。2-t-ブチル-1,4-ジメトキシベンゼン(モノ置換体)が完成し硫酸が再生する。残った活性位置(C5相当)で同じ機構をもう一度繰り返すとジ-t-ブチル体になる。
なぜこう進むのか
- 原理
- EASの一型(アルキル化)。求電子剤は第3級カルボカチオン(t-ブチルカチオン)。t-ブチルアルコールを濃硫酸がプロトン化し、水が抜けて生じる。電子豊富な1,4-ジメトキシベンゼン(OMe×2が強い活性化基)がこのカチオンを攻め、付加→脱プロトンで戻る。同じことが2回起きて1,4-ジ-t-ブチル-2,5-ジメトキシベンゼンになる。
- 選択性
- Q.なぜ 2,5 位に入るのか/なぜ転位が起きないのか
A.2つのOMeはo/p配向の活性化基。OMeのオルト位(=もう一方のOMeのメタ位)が最も電子豊富で、立体の許す位置に入って2,5-ジ置換になる。t-ブチルカチオンは最初から第3級で最も安定なので、転位(より安定なカチオンへ組み替え)が起こらない=Friedel–Craftsアルキル化につきものの転位の心配がない、教材向きの基質。 - 駆動力
- 律速はアレニウム生成。OMeの酸素の孤立電子対が正電荷を強く安定化する(オキソカルベニウム共鳴)ので、ジメトキシベンゼンは弱い試薬でも反応する。再芳香族化で安定化。硫酸は触媒で再生。
検算
この機構は機械検算を通過しています。
原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。
検算の内訳を見る
| 矢印⇄結合変化の整合 | 整合 | fail=0 / check=0(全4段) |
|---|---|---|
| 電荷保存 | 保存 | 全段で電荷保存 |
| 中間体の鎖の連続 | 連続 | 中間体の鎖が連続 |
| 生成物への到達(内部整合) | 到達 | 看板の生成物が機構の終着点に一致 |
| 生成物の分子式 | C12H18O2 | |
| PubChem 照合 | 緑・完全一致 | 完全一致(CID 88792) 2-tert-butyl-1,4-dimethoxybenzene |