Moleculus
有機化学リファレンス

Grignard 1,2-Addition to an Enone

エノンへのグリニャール1,2-付加

エノンへのGrignardの1,2-付加:メチルビニルケトン(MVK)+CH3MgBr → マグネシウムアルコキシド →(H2O後処理)→ 2-メチル-3-ブテン-2-オール(第三級アリルアルコール)

全体式

出発物から生成物へ

+ +
基本形 General Form

反応の基本形

C=C–C=O + R'MgX → C=C–C(OH)R'(1,2-付加)

無水エーテル → H₃O⁺後処理(1,2-選択)カルボニルへの求核付加(Grignard・1,2-付加)

Grignard 試薬がα,β-不飽和カルボニルのカルボニル炭素へ1,2-付加し、後処理でアリルアルコールを与える反応である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

Grignardの1,2-付加(カルボニル炭素へC–C結合/マグネシウムアルコキシド生成)

試薬・条件CH3MgBr

23456101112
この段のあと
23456101112

MVKのカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。炭素C2は、電気陰性なO3にC=Oの電子を引かれて部分正電荷(δ+電気陰性度の差で結合の電子が偏り、δ+とδ-の部分電荷が生じること。)を帯びている。硬い炭素求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。であるGrignardのメチル等価体C10が、共役系二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。のβ炭素C6ではなくこのカルボニル炭素C2を攻撃して新しいC2–C10結合を作る(A)=1,2-付加。玉突きでC2=O3のπ電子が酸素O3へ降りてアルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。(O⁻)になる(B)。C5=C6の二重結合はそのまま残る。C2はメチル2つとビニル1つを持つsp3の第三級炭素になり、O⁻はMg²⁺と塩(O–MgBr)を作る。Mg²⁺・Br⁻は対イオン。

Q.なぜβ炭素C6でなくカルボニル炭素C2を攻めるのか

A.Grignardは電荷が強く局在した硬い(hard)求核剤で、静電的に最も正電荷が濃い点=カルボニル炭素を直接攻めるから(HSAB)。カルボニル炭素はO側に電子を引かれてδ+が最大。だから軟らかいGilman試薬がβ炭素を狙う1,4-付加とは逆に、1,2-付加になる。

Step2

後処理:プロトン化(第三級アリルアルコール完成)

試薬・条件H2O(H3O⁺)

234561020212223
生成物(完成)
234561020212223

反応が終わったところで水(酸性後処理)を加える。アルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。O3⁻の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。が水のプロトンH21を受け取り(C)、玉突きでO20–H21の結合電子がO20へ戻って水になる(B)。二重結合を残したまま中性の第三級アルコール=2-メチル-3-ブテン-2-オール(CH2=CH–C(OH)(CH3)–CH3、第三級アリルアルコール)が完成する。

Q.なぜ最後に水(後処理)でプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。するのか

A.1,2-付加でできるのはアルコキシドのMg塩であって、まだアルコールそのものではないから。反応が終わった後に水を加えてO⁻をO–Hにプロトン化して初めて、目的の中性アルコールが取り出せる。付加の途中でなく最後に入れるのがGrignardの鉄則。

考察

なぜこう進むのか

原理
MVK のようなα,β-不飽和ケトン(エノン)は共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。により、カルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。炭素とβ炭素(末端の=CH2)の2つの求電子点をもつ。ここへ硬い(hard)炭素求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。である Grignard 試薬 CH3MgBr を作用させると、メチル基がカルボニル炭素に直接C–C結合を作る=1,2-付加になる。π電子は酸素へ降りてマグネシウムアルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。になり、後処理の水でプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。して中性のアルコールにする。C=C二重結合はそのまま残るので、生成物は二重結合を残した第三級アリルアルコール(2-メチル-3-ブテン-2-オール)になる。
選択性
Q.同じMVKでも、なぜGrignardは1,2-付加でGilman(R2CuLi)は1,4-付加なのか
A.求核剤の硬さ/軟らかさ(HSAB)で分かれる。Grignard・有機リチウムは電荷が強く局在した硬い求核剤で、静電的に最も正電荷が濃いカルボニル炭素(1,2位)を直接攻める=1,2-付加。対して有機銅(Gilman, R2CuLi)は分極電気陰性度の差で結合の電子が偏り、δ+とδ-の部分電荷が生じること。率の高い軟らかい求核剤で、共役系二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。の軟らかい求電子点=β炭素(1,4位)を好む=1,4-付加(共役/Michael付加)。だから同じエノンでも試薬を替えると付く位置が変わる。
駆動力
C–Mg結合の強い求核性(分極でCが負電荷側)がδ+のカルボニル炭素との間に安定なC–C結合を作ることが駆動力。生じたアルコキシドは後処理の酸でプロトン化されて安定な中性アルコールに固定され、反応が完結する。この段では水を入れない(入れるとGrignardがプロトンを奪われて分解する)。
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検算 Verified

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この機構は機械検算を通過しています。

原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械で検証しています。妥当な経路は複数ありえます。

検算とは何か — 保証していないことも

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矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全2段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C5H10O
PubChem 照合緑・完全一致(CID 8257)
2-methylbut-3-en-2-ol
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