Grignard Addition to a Ketone
ケトンへのグリニャール付加の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)
ケトンへのGrignard付加:アセトン+CH3MgBr → マグネシウムアルコキシド →(H2O後処理)→ 2-メチルプロパン-2-オール(tert-ブタノール、第三級アルコール)
全体式
反応機構(段ごと)
アセトンのカルボニル炭素C2は、電気陰性なO3にC=Oの電子を引かれて部分正電荷(δ+)を帯びている。Grignardのメチル等価体C10(強い炭素求核剤)がそのC2を攻撃して新しいC2–C10結合を作る(A)。玉突きでC2=O3のπ電子が酸素O3へ降りてアルコキシド(O⁻)になる(B)。C2はメチル3つを持つsp3の第三級炭素になり、O⁻はMg²⁺と塩(O–MgBr)を作る。Mg²⁺・Br⁻は対イオン。
Q.なぜカルボニル炭素を攻めるのか、そしてこの段で水を入れてはいけないのか
A.カルボニル炭素はO側に電子を引かれてδ+=最も求電子性が高い点だから、そこを求核剤が攻める。水を入れてはいけないのは、Grignardは強塩基でもあり水のO–Hプロトンを即座に奪ってCH4になり分解してしまうから。付加が終わってから初めて水で後処理する。
反応が終わったところで水(酸性後処理)を加える。アルコキシドO3⁻の孤立電子対が水のプロトンH21を受け取り(C)、玉突きでO20–H21の結合電子がO20へ戻って水になる(B)。中性の第三級アルコール=2-メチルプロパン-2-オール(tert-ブタノール、(CH3)3C–OH)が完成する。
Q.なぜ最後に水(後処理)でプロトン化するのか
A.付加でできるのはアルコキシドのMg塩であって、まだアルコールそのものではないから。反応が終わった後に水を加えてO⁻をO–Hにプロトン化して初めて、目的の中性アルコールが取り出せる。付加の途中でなく最後に入れるのがGrignardの鉄則。
なぜこう進むのか
- 原理
- Grignard試薬 CH3MgBr の炭素はカルボアニオン的に働く強い求核剤で、部分正電荷(δ+)を帯びたカルボニル炭素へ1,2付加する。まずメチル基がカルボニル炭素にC–C結合を作り、π電子は酸素へ降りてマグネシウムアルコキシド(O–MgBrの塩)になる。この段では水を絶対に入れない(入れるとGrignardが分解する)。反応が終わってから水で後処理してアルコキシドをプロトン化し、中性のアルコールにする。ケトン+Grignardは置換基が3つ付いた炭素にOHが乗る第三級アルコールを与える。
- 選択性
- Q.なぜ第三級アルコールになるのか
A.出発物のケトン(アセトン)はカルボニル炭素にすでにメチルが2つ付いている。そこへGrignardのメチルがもう1つC–C結合で加わるので、OHの付く炭素はメチル3つを持つ第三級炭素になる。アルデヒドなら第二級、ホルムアルデヒドなら第一級。付く炭素の置換基の数がそのままアルコールの級数を決める。 - 駆動力
- C–Mg結合の強い求核性(分極でCが負電荷側)が、安定な新しいC–C結合をカルボニル炭素との間に作ることが駆動力。生じたアルコキシドは後処理の酸でプロトン化されて安定な中性アルコールに固定され、反応が完結する。
検算
この機構は機械検算を通過しています。
原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。
検算の内訳を見る
| 矢印⇄結合変化の整合 | 整合 | fail=0 / check=0(全2段) |
|---|---|---|
| 電荷保存 | 保存 | 全段で電荷保存 |
| 中間体の鎖の連続 | 連続 | 中間体の鎖が連続 |
| 生成物への到達(内部整合) | 到達 | 看板の生成物が機構の終着点に一致 |
| 生成物の分子式 | C4H10O | |
| PubChem 照合 | 緑・完全一致 | 完全一致(CID 6386) 2-methylpropan-2-ol |