Haloform Reaction
ハロホルム反応(ヨードホルム反応):アセトフェノン + I2/NaOH → 安息香酸イオン + ヨードホルム CHI3。メチルケトン(CH3CO–)を塩基+ハロゲン過剰で処理すると、α位が3回ハロゲン化されてトリヨードメチル基(–CI3)になり、良い脱離基 CI3⁻として抜けてカルボキシラートを与える。CHI3 は黄色沈殿で、メチルケトンの検出(ヨードホルム反応)にも使われる。
R–CO–CH₃ + 3 X₂ + 4 OH⁻ → R–COO⁻ + CHX₃ + 3 X⁻ + 3 H₂O
メチルケトンのα位が三重にハロゲン化され、CX₃⁻が脱離してカルボキシラートとハロホルムを与える反応である。
巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。
試薬・条件OH⁻
アセトフェノンのメチル基のα水素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。H7は、カルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。C2に隣接して酸性。塩基OH⁻の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がH7を引き抜き(C)、C1–H7の結合電子がC1=C2を作りに行き(B)、玉突きでC2=O3のπ電子が酸素O3へ降りてO⁻になる(B)。生じた負電荷がα炭素C1とカルボニル酸素O3に非局在化1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。できることがα水素の酸性の理由。アセトフェノンエノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。(O-アニオン型)ができる。
Q.なぜカルボニルの隣のα水素だけが抜けるのか
A.α炭素の負電荷(共役塩基酸が水素イオン(H⁺)を1つ手放したあとに残る化学種。安定なほど元の酸は強酸である。)が、隣のカルボニルへ流れてO⁻として非局在化=共鳴安定化できるから。芳香環環状で平面のπ電子系が、規則を満たして特別に安定になる性質。やアルキルのC–Hはこの安定化が無く、pKaが40以上でOH⁻では抜けない。α-HのpKa≈20はOH⁻(水のpKa≈15.7)で一部が抜ける程度で、平衡でエノラートが供給される。
試薬・条件I2
エノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。のO3の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がC2=O3のカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。を再生し(B)、玉突きでC1=C2のπ電子(求核性のα炭素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。C1)がI2のヨウ素I8を攻撃して新しいC1–I8結合を作る(A)。玉突きでI8–I9の結合電子がI9へ降りてヨウ化物イオンI⁻が脱離する(B, 脱離矢印)。α位にヨウ素が1個入ったモノヨードアセトフェノンができる。
Q.なぜエノラートのα炭素がヨウ素を攻めるのか
A.エノラートはα炭素C1に電子が溜まった求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。(C=C二重結合の炭素側が求核点)で、I2は分極電気陰性度の差で結合の電子が偏り、δ+とδ-の部分電荷が生じること。してδ+を帯びたヨウ素を求電子剤電子が足りず、電子の余った相手(求核剤)から電子対を受け取る側の化学種。として差し出すから。求核的なα炭素が電子の薄いヨウ素を攻め、もう片方のヨウ素がI⁻として抜ける。
試薬・条件OH⁻
モノヨード体の残るα水素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。H7を、塩基OH⁻がふたたび引き抜く(C)。C1–H7の結合電子がC1=C2を作り(B)、C2=O3のπ電子が酸素O3へ降りてエノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。になる(B)。ヨウ素が1個付いたα炭素C1のエノラートができる。
Q.なぜモノヨード体のα-Hは、もとのアセトフェノンより抜けやすいのか
A.α炭素にすでに付いたヨウ素I8が電気陰性で電子を引く(電子求引性)から。脱プロトン分子が水素イオン(H⁺)を塩基に引き抜かれて手放す操作。プロトン化の逆である。で生じるエノラートの負電荷を、隣のヨウ素が引いて安定化する(共役塩基酸が水素イオン(H⁺)を1つ手放したあとに残る化学種。安定なほど元の酸は強酸である。が安定=酸性が上がる)。だから1個入るごとにα-Hはより酸性になり、脱プロトン→ヨウ素化が加速する。ここがハロホルム反応が『止まらない』理由。
試薬・条件I2
エノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。のO3の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。C2=O3を再生し(B)、求核性のα炭素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。C1(C1=C2のπ電子)がI2のヨウ素I16を攻撃してC1–I16結合を作る(A)、玉突きでI16–I9の結合電子がI9へ降りてI⁻が脱離する(B, 脱離矢印)。α位にヨウ素が2個ついたジヨード体ができる。
試薬・条件OH⁻
ジヨード体に残る最後のα水素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。H7を、塩基OH⁻が引き抜く(C)。C1–H7の結合電子がC1=C2を作り(B)、C2=O3のπ電子が酸素O3へ降りてエノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。になる(B)。ヨウ素が2個付いたα炭素C1のエノラートができる。2個のヨウ素の電子求引で、このα-Hは最も酸性で最も抜けやすい。
Q.3個目のヨウ素化の前に、なぜまた脱プロトン分子が水素イオン(H⁺)を塩基に引き抜かれて手放す操作。プロトン化の逆である。から始めるのか
A.ヨウ素化はエノラート(求核的なα炭素)でしか起きないから。中性のジヨードケトンはそのままではI2を攻められず、まずα-Hを抜いてエノラートに戻す必要がある。2個のヨウ素が付いた今、α-Hは3回のうち最も酸性で、脱プロトンは最も速い。
試薬・条件I2
エノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。のO3の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。C2=O3を再生し(B)、求核性のα炭素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。C1(C1=C2のπ電子)がI2のヨウ素I17を攻撃してC1–I17結合を作る(A)、玉突きでI17–I9の結合電子がI9へ降りてI⁻が脱離する(B, 脱離矢印)。α炭素C1にヨウ素が3個ついた–CI3(トリヨードメチル基)が完成する。これでα炭素にはもう水素が残らず、ここまでの脱プロトン分子が水素イオン(H⁺)を塩基に引き抜かれて手放す操作。プロトン化の逆である。–ヨウ素化はこれ以上進めない。
Q.なぜ3個で止まるのか(4個目が入らないのはなぜか)
A.α炭素にあった水素はもともと3個(メチル基CH3)で、3回のヨウ素化で全部ヨウ素に置き換わったから。エノラートを作るためのα-Hがもう残っていないので、それ以上ヨウ素化できない。ここで反応の向きが変わり、次はOH⁻がカルボニルに付加して–CI3を切り離す段に移る。
試薬・条件OH⁻
水酸化物イオンOH⁻の酸素O6の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。が、トリヨードメチルケトンのカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。炭素C2を攻撃して新しいO6–C2結合を作る(A)。玉突きでC2=O3のπ電子が酸素O3へ降りてアルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。O⁻になる(B)。C2は–CI3・フェニル・O⁻・OHが付いた四面体炭素(四面体中間体カルボニルに求核剤が付き、炭素がsp3の四面体形になった中間体。)になる。求核アシル置換カルボニルに求核剤が付いてから脱離基が抜け、正味で置換になる二段の型。の『付加』の段。
Q.なぜOH⁻がカルボニルに付加できるのか(–CI3が助けているか)
A.カルボニル炭素C2はδ+電気陰性度の差で結合の電子が偏り、δ+とδ-の部分電荷が生じること。の求電子点で、OH⁻は強い求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。だから付加できる。加えて隣の–CI3が電子求引でC2の正電荷性を高め、付加を受けやすくしている。この付加でできる四面体中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。が、次に–CI3を CI3⁻として吐き出す舞台になる。
四面体中間体カルボニルに求核剤が付き、炭素がsp3の四面体形になった中間体。のアルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。O3の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がC2=O3の二重結合を作りに戻り(B)、玉突きでC1–C2の結合電子がα炭素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。C1へ降りて、–CI3がトリヨードメチルアニオンCI3⁻として脱離する(B, 脱離矢印)。C2はカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。を再生して安息香酸(–COOH)になる。求核アシル置換カルボニルに求核剤が付いてから脱離基が抜け、正味で置換になる二段の型。の『脱離』の段。
Q.普通は抜けないカルバニオン炭素の上に負電荷を持つ化学種で、強い求核剤・塩基としてはたらく。なのに、なぜ–CI3はCI3⁻として脱離できるのか
A.3個のヨウ素が電子求引で、抜けたあとの炭素上の負電荷を強く分散・安定化するから。ふつうのアルキルアニオン(例えばCH3⁻)は共役二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。酸のpKaが約50で強塩基=脱離基結合の電子対を持ったまま分子から抜けていく原子や原子団。抜けたあと安定なほど良い脱離基となる。として最悪だが、CI3⁻は共役酸CHI3のpKaが小さく(=安定なアニオン)、例外的に脱離できる。O3のアルコキシドがカルボニルを再生する押し出しと合わさって、この段が進む。
脱離したトリヨードメチルアニオンCI3⁻(炭素C1の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。)が、安息香酸のO–HのプロトンH18を奪う(C)。玉突きでO6–H18の結合電子が酸素O6へ戻ってカルボキシラート(安息香酸イオン)になる(B)。C1はプロトンを受け取ってヨードホルムCHI3(黄色沈殿)になる。CI3⁻は強い塩基でカルボン酸から容易にプロトンを奪う。
Q.なぜ最後にプロトンが移動して、この向きで止まるのか
A.生じるカルボキシラート(安息香酸イオン)は負電荷が2つの酸素に共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。で非局在化して安定=弱い塩基で、対応する酸(安息香酸、pKa≈4)は強い酸。一方CI3⁻の共役二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。酸CHI3はそれより弱い酸なので、プロトンは酸性の強いカルボン酸から塩基性の強いCI3⁻へ移る。生成物側(安定なカルボキシラート+中性CHI3)が安定なので、この酸塩基反応は事実上不可逆に進み、反応全体を生成側へ引く。
同じ中間体・対になる選択性・連続する変換など、位置の近い反応です。反応マップで全体の中での位置も見られます。
原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械で検証しています。妥当な経路は複数ありえます。
| 矢印⇄結合変化の整合 | 整合 — fail=0 / check=0(全9段) |
|---|---|
| 電荷保存 | 保存 — 全段で電荷保存 |
| 中間体の鎖の連続 | 連続 — 中間体の鎖が連続 |
| 生成物への到達(内部整合) | 到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成 |
| 生成物の分子式 | C7H5O2- |
| PubChem 照合 | 緑・完全一致(CID 242) benzoate |