Moleculus
有機化学リファレンス

Michael Addition

マイケル付加

Michael 付加(共役付加):マロン酸ジエチル + NaOEt でエノラート(活性メチレンの脱プロトン)→ メチルビニルケトン(MVK, α,β-不飽和ケトン=Michael 受容体)へ 1,4-付加 → いったんエノラートを経て、プロトン化でケト体(1,5-ジカルボニル型の Michael 付加体)。

全体式

出発物から生成物へ

+
基本形 General Form

反応の基本形

Nu–H + C=C–C=O → Nu–C–CH–C=O(1,4-付加)

触媒塩基(NaOEt など)、Michael 受容体(α,β-不飽和カルボニル)共役付加(Michael 付加)

安定化した炭素求核剤がα,β-不飽和カルボニルのβ炭素へ共役(1,4-)付加する反応である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

エノラートの生成(活性メチレンの脱プロトン)

試薬・条件NaOEt(エトキシド EtO⁻・弱い塩基)

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この段のあと
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エトキシド(EtO⁻)の酸素O20が、マロン酸ジエチルの活性メチレン(2つのエステルに挟まれた炭素C1)の水素H8を引き抜く(C)。玉突きでC1–H8の結合電子がC1とC5の間へ動いてC1=C5のπ結合を作り(B)、同時にC5=O6のπ電子が酸素O6へ降りてO6⁻になる(B)。負電荷が2つのカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。酸素に共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。で分散した安定なエノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。カルバニオン炭素の上に負電荷を持つ化学種で、強い求核剤・塩基としてはたらく。)が生じ、エタノールが遊離する。

Q.なぜ弱い塩基のエトキシドで脱プロトン分子が水素イオン(H⁺)を塩基に引き抜かれて手放す操作。プロトン化の逆である。できるのか(どのHが外れるか)

A.外れるのは2つのカルボニルに挟まれた活性メチレンのH。生じる負電荷が両側のカルボニル酸素へ共鳴で分散するため非常に安定で、この位置のC–Hは pKa ≈ 13 と小さい。エトキシド(共役二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。酸エタノールの pKa ≈ 16)でも十分に脱プロトンできる。ふつうのケトンα-H(pKa ≈ 20)より格段に酸性。

Step2

β炭素への1,4-付加(共役付加・C–C結合形成)

試薬・条件メチルビニルケトン(MVK・Michael受容体)

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この段のあと
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エノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。の求核炭素C1(C1=C5のπ電子)が、MVKのβ炭素C30を攻撃して新しいC1–C30結合を作る(A)。玉突きで、エノラート酸素O6の負電荷が戻ってC5=O6のカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。が再生する(B)。受容側では、C30=C31のπ電子がC31–C32間へ動いてC31=C32を作り(B)、玉突きでC32=O33のπ電子が酸素O33へ流れ込む(B)。負電荷はカルボニル酸素O33に落ち着き、MVK由来のエノラートになる。C1はH1つ・エステル2つ・新しい鎖が付いた四置換炭素になる。

Q.なぜMVKの末端の炭素(β炭素C30)を攻めるのか

A.MVKはC30=C31–C32=O33が共役二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。していて、カルボニルの求電子性(δ⁺)が共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。でβ炭素C30まで広がっている(C30が求電子点)。求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。がC30に付くと、余った負電荷がC31を経てカルボニル酸素O33まで流れ、共鳴安定なエノラートで受け止められる。これが1,4-付加(共役付加)=Michael付加。カルボニル炭素C32を直接攻める1,2-付加では、この安定なエノラートにならない。

Step3

エノラートのプロトン化(ケト体への互変異性)

試薬・条件EtOH(エタノール・プロトン源)

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生成物(完成)
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MVK由来エノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。の酸素O33上の負電荷(O33–C32のπを作りに動く)がC32=O33を再形成し(B)、玉突きでC31=C32のπ電子がα炭素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。C31へ移って(B)、そのC31がエタノールのプロトンH40を受け取る(C)。O20–H40の結合電子は酸素O20へ戻ってエトキシドが再生する(B)。エノラートがケト体(C32=O33のメチルケトン)に戻り、Michael付加体が完成する。触媒反応を速めるが、自身は反応の前後で消費されず再生される物質。として使った塩基(EtO⁻)が戻るのも要点。

Q.なぜここでプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。するとケト体(1,5-ジカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。)になるのか

A.付加直後の中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。はカルボニル酸素側に負電荷をもつエノラート(エノール形の共役塩基酸が水素イオン(H⁺)を1つ手放したあとに残る化学種。安定なほど元の酸は強酸である。)。α炭素C31がプロトンを受け取ると、C=Cが消えてC=O(ケト形)に戻る=ケト‑エノール互変異性プロトンの移動と二重結合の組み替えで、ケト形とエノール形が行き来する現象。のケト側。こうしてできた生成物は、マロン酸部のカルボニルとMVK由来のケトンが炭素3つを挟んで並ぶ1,5-ジカルボニル化合物(Michael付加体)になる。

考察

なぜこう進むのか

原理
安定なカルバニオン炭素の上に負電荷を持つ化学種で、強い求核剤・塩基としてはたらく。(1,3-ジカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。エノラートカルボニルの隣(α位)の水素が外れてでき、炭素と酸素に負電荷が広がった陰イオン。)を、C=C–C=O が共役二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。した α,β-不飽和カルボニル(Michael 受容体)の β 炭素に付加させて新しい C–C 結合を作る反応。ふつうの求核付加求核剤がカルボニルなどの二重結合に付き、π結合が開いて新しい結合ができる反応。はカルボニル炭素(1,2-付加)だが、電子求引性のカルボニルが共役を通して β 炭素まで δ⁺ を広げているため、安定なエノラートのような穏やかな求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。は、より遠い β 炭素を攻める 1,4-付加(共役付加)を選ぶ。β 炭素に付加すると負電荷はカルボニル酸素へ流れてエノラートで受け止められ、そこへプロトンが付いてケト体になる。生成物は 1,5-ジカルボニル(間に炭素 3 つを挟んで 2 つのカルボニルが並ぶ)で、しかも元の 1,3-ジカルボニル部分も残るため、さらに脱プロトン分子が水素イオン(H⁺)を塩基に引き抜かれて手放す操作。プロトン化の逆である。・アルキル化・加水分解/脱炭酸などへ展開できる。
選択性
Q.なぜカルボニル炭素(1,2-付加)でなく β 炭素(1,4-付加)に付くのか
A.α,β-不飽和カルボニルは C=C と C=O が共役していて、カルボニルの δ⁺ が共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。で β 炭素にも広がっている(β 炭素が求電子点になる)。マロン酸エステルのエノラートのように共鳴で安定化された穏やかな(軟らかい)求核剤は、いったん付いても外れやすい 1,2-付加でなく、付加後にエノラートとして安定化できる熱力学支配の 1,4-付加を選ぶ。硬い求核剤(Grignard 等)が 1,2-付加に寄るのと対照的。
駆動力
駆動力は 2 つ。ひとつは弱い塩基(NaOEt)でも 1,3-ジカルボニルの活性メチレンが脱プロトンされること(2 つのカルボニルに挟まれた C–H は共鳴で安定化され pKa ≈ 13 と小さい=エノラート化が進む)。もうひとつは、β 炭素へ付加した瞬間に負電荷がカルボニル酸素へ流れ、共鳴安定なエノラートで受け止められること(付加が有利になる)。最後のプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。で中性のケト体になり、生成物も 1,3-ジカルボニルなのでさらに使える。
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検算 Verified

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検算とは何か — 保証していないことも

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矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全3段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C11H18O5
PubChem 照合緑・完全一致(CID 253183)
diethyl 2-(3-oxobutyl)propanedioate
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