Moleculus
有機化学リファレンス

NaBH4 Reduction of a Ketone

NaBH4によるケトンの還元

NaBH4によるケトンのヒドリド還元:アセトン + NaBH4 →(MeOH/H2O後処理)→ 2-プロパノール(第二級アルコール)。金属水素化物がカルボニルにヒドリド(H⁻)を渡してアルコールにする還元。

全体式

出発物から生成物へ

+ +
基本形 General Form

反応の基本形

R₂C=O → R₂CH–OH(第二級アルコール)

NaBH₄・プロトン性溶媒(MeOH/EtOH)カルボニルへの求核付加(ヒドリド還元)

穏やかなヒドリド源NaBH₄がケトンにH⁻を渡し、第二級アルコールに還元する反応である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

ヒドリド付加(アルコキシドの生成)

試薬・条件NaBH4

1234101112131415
この段のあと
1234101112131415

NaBH4のB11–H12結合のヒドリド電子対を伴った水素(H⁻)。還元剤からカルボニルの炭素へ移って還元する。(電子対を持つH⁻)が、アセトンのカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。炭素C2を攻撃して新しいC2–H12結合を作る(A)。玉突きでC2=O3のπ電子が酸素O3へ降りてアルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。(O⁻)になる(B)。C2はsp3の四面体炭素になり、CH3が2つとHが1つ付いた第二級アルコキシドができる。Na⁺は対イオン、残ったBH3が副生。

Q.なぜヒドリドがカルボニル炭素を攻めるのか(どこを攻めるのか)

A.カルボニル炭素C2は電気陰性な酸素との二重結合でδ⁺(電子が薄い)=求電子点だから。B–H結合の水素は、電気陰性度結合の電子対を引き寄せる強さの尺度。大きい原子ほど電子を引き、分極を生む。の低いホウ素側から見て電子豊富なヒドリド(H⁻)として働き、電子対ごとこの電子の薄い炭素へ渡る。これが金属水素化物によるカルボニルへのヒドリド求核付加求核剤がカルボニルなどの二重結合に付き、π結合が開いて新しい結合ができる反応。

Step2

後処理:プロトン化(第二級アルコール完成)

試薬・条件MeOH(プロトン性溶媒/後処理)

123412202122
生成物(完成)
123412202122

後処理でアルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。O3⁻が、プロトン性溶媒メタノールのO–H(H22)からプロトンを受け取る(C)。玉突きでO21–H22の結合電子が酸素O21へ戻ってメトキシド(CH3O⁻)になる(B)。O3が中性の–OHになり、2-プロパノール((CH3)2CH–OH、第二級アルコール)が完成する。プロトン源は水でもよい(MeOH/H2O後処理)。

Q.なぜ後処理でプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。の段が要るのか

A.ヒドリド電子対を伴った水素(H⁻)。還元剤からカルボニルの炭素へ移って還元する。付加の段でできるのはアルコキシド(O⁻)で、まだ中性のアルコールではないから。炭素の還元自体は1段目で終わっていて、酸素上の負電荷をプロトンで中和して初めて–OHになる。NaBH4はこのプロトン化まで進むプロトン性溶媒(MeOH・H2O)中で使えるのが穏やかさの利点。

考察

なぜこう進むのか

原理
NaBH4電気陰性度結合の電子対を引き寄せる強さの尺度。大きい原子ほど電子を引き、分極を生む。の低いホウ素にH4が付いた塩で、B–H結合が分極電気陰性度の差で結合の電子が偏り、δ+とδ-の部分電荷が生じること。してHがヒドリド電子対を伴った水素(H⁻)。還元剤からカルボニルの炭素へ移って還元する。(H⁻)として振る舞う。このヒドリドが電子の薄いカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。炭素(δ⁺)を求核付加求核剤がカルボニルなどの二重結合に付き、π結合が開いて新しい結合ができる反応。し、C=Oのπ電子が酸素に降りてアルコキシドアルコールのO–Hが外れ、酸素上に負電荷を持った陰イオン。強い求核剤・塩基である。(O⁻)になる。ここまでで炭素の還元は完了し、あとはプロトン性溶媒(MeOH)や水の後処理でO⁻にプロトンが付いてアルコールになる。ケトンなのでヒドリドは1回だけ入り、生成物は第二級アルコール。アルデヒドなら第1級アルコール、ケトンなら第2級アルコールになる。
選択性
Q.なぜNaBH4を使うのか(LiAlH4との使い分け)
A.NaBH4は穏やかな還元剤で、アルデヒド・ケトンは還元するがエステルとは通常反応しない。だから水やアルコールを溶媒に使える扱いやすさがあり、エステルなど他の官能基を残したいときに向く。対してLiAlH4はAlの方がHを出しやすく反応性が高く、エステルも第1級アルコールまで還元してしまう(水と激しく反応するので無水条件が要る)。ここはアセトン(ケトン)を第2級アルコールにするだけなので、穏やかなNaBH4で十分。
駆動力
B–H結合のヒドリドが電子不足のカルボニル炭素へ電子対ごと渡り、弱いπ結合が切れて安定なO–H(後処理後のアルコール)とC–H結合ができるのが駆動力。カルボニル還元は基本的に不可逆で生成側に進む。
関連 Related

近い反応・対になる反応

同じ中間体・対になる選択性・連続する変換など、位置の近い反応です。反応マップで全体の中での位置も見られます。

反応マップでこの周辺を見る →

検算 Verified

機構の正しさを機械で確かめる

この機構は機械検算を通過しています。

原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械で検証しています。妥当な経路は複数ありえます。

検算とは何か — 保証していないことも

検算の内訳を見る
矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全2段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C3H8O
PubChem 照合緑・完全一致(CID 3776)
propan-2-ol
← 反応一覧にもどる