NaBH4 Reduction of a Ketone
NaBH4によるケトンの還元の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)
NaBH4によるケトンのヒドリド還元:アセトン + NaBH4 →(MeOH/H2O後処理)→ 2-プロパノール(第二級アルコール)。金属水素化物がカルボニルにヒドリド(H⁻)を渡してアルコールにする還元。
全体式
反応機構(段ごと)
NaBH4のB11–H12結合のヒドリド(電子対を持つH⁻)が、アセトンのカルボニル炭素C2を攻撃して新しいC2–H12結合を作る(A)。玉突きでC2=O3のπ電子が酸素O3へ降りてアルコキシド(O⁻)になる(B)。C2はsp3の四面体炭素になり、CH3が2つとHが1つ付いた第二級アルコキシドができる。Na⁺は対イオン、残ったBH3が副生。
Q.なぜヒドリドがカルボニル炭素を攻めるのか(どこを攻めるのか)
A.カルボニル炭素C2は電気陰性な酸素との二重結合でδ⁺(電子が薄い)=求電子点だから。B–H結合の水素は、電気陰性度の低いホウ素側から見て電子豊富なヒドリド(H⁻)として働き、電子対ごとこの電子の薄い炭素へ渡る。これが金属水素化物によるカルボニルへのヒドリド求核付加。
後処理でアルコキシドO3⁻が、プロトン性溶媒メタノールのO–H(H22)からプロトンを受け取る(C)。玉突きでO21–H22の結合電子が酸素O21へ戻ってメトキシド(CH3O⁻)になる(B)。O3が中性の–OHになり、2-プロパノール((CH3)2CH–OH、第二級アルコール)が完成する。プロトン源は水でもよい(MeOH/H2O後処理)。
Q.なぜ後処理でプロトン化の段が要るのか
A.ヒドリド付加の段でできるのはアルコキシド(O⁻)で、まだ中性のアルコールではないから。炭素の還元自体は1段目で終わっていて、酸素上の負電荷をプロトンで中和して初めて–OHになる。NaBH4はこのプロトン化まで進むプロトン性溶媒(MeOH・H2O)中で使えるのが穏やかさの利点。
なぜこう進むのか
- 原理
- NaBH4は電気陰性度の低いホウ素にH4が付いた塩で、B–H結合が分極してHがヒドリド(H⁻)として振る舞う。このヒドリドが電子の薄いカルボニル炭素(δ⁺)を求核付加し、C=Oのπ電子が酸素に降りてアルコキシド(O⁻)になる。ここまでで炭素の還元は完了し、あとはプロトン性溶媒(MeOH)や水の後処理でO⁻にプロトンが付いてアルコールになる。ケトンなのでヒドリドは1回だけ入り、生成物は第二級アルコール。アルデヒドなら第1級アルコール、ケトンなら第2級アルコールになる。
- 選択性
- Q.なぜNaBH4を使うのか(LiAlH4との使い分け)
A.NaBH4は穏やかな還元剤で、アルデヒド・ケトンは還元するがエステルとは通常反応しない。だから水やアルコールを溶媒に使える扱いやすさがあり、エステルなど他の官能基を残したいときに向く。対してLiAlH4はAlの方がHを出しやすく反応性が高く、エステルも第1級アルコールまで還元してしまう(水と激しく反応するので無水条件が要る)。ここはアセトン(ケトン)を第2級アルコールにするだけなので、穏やかなNaBH4で十分。 - 駆動力
- B–H結合のヒドリドが電子不足のカルボニル炭素へ電子対ごと渡り、弱いπ結合が切れて安定なO–H(後処理後のアルコール)とC–H結合ができるのが駆動力。カルボニル還元は基本的に不可逆で生成側に進む。
検算
この機構は機械検算を通過しています。
原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。
検算の内訳を見る
| 矢印⇄結合変化の整合 | 整合 | fail=0 / check=0(全2段) |
|---|---|---|
| 電荷保存 | 保存 | 全段で電荷保存 |
| 中間体の鎖の連続 | 連続 | 中間体の鎖が連続 |
| 生成物への到達(内部整合) | 到達 | 看板の生成物が機構の終着点に一致 |
| 生成物の分子式 | C3H8O | |
| PubChem 照合 | 緑・完全一致 | 完全一致(CID 3776) propan-2-ol |