Nitration of Benzene
ベンゼンのニトロ化の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)
芳香族求電子置換:ベンゼンのニトロ化(HNO3/H2SO4)→ ニトロベンゼン
全体式
++→
反応機構(段ごと)
ニトロニウム生成① 硫酸が硝酸をプロトン化
試薬・条件: H2SO4
硫酸は硝酸より強酸。硝酸のOH酸素O13の孤立電子対が硫酸のプロトンH35を奪い(C)、O30–H35の結合電子がO30へ戻って硫酸水素イオンHSO4⁻になる(B)。硝酸のOHが–OH2⁺(良い脱離基=水)に変わる。
ニトロニウム生成② 水が脱離してNO2⁺
O12⁻の孤立電子対がN10との間に二つ目の結合(π)を作りに行き(B)、玉突きでN10–O13結合の電子がO13へ降りて水H2Oが脱離する(B, 脱離矢印)。生じるのが直線形のニトロニウムイオン O=N⁺=O=求電子剤の本体。
求電子付加:アレニウム(Wheland)中間体の生成(律速)
試薬・条件: NO2⁺
芳香環のπ電子(C3=C4)がニトロニウムのN10を攻撃し新しいC4–N10結合を作る(A)。玉突きでNO2⁺のN=O12のπ電子がO12へ降りて中性のニトロ基になる(B)。環は芳香族性を失い、正電荷が環上に乗ったアレニウム(シクロヘキサジエニル陽イオン)になる。芳香族性を壊すこの段が律速。
脱プロトンで再芳香族化(ニトロベンゼン)
試薬・条件: HSO4⁻(塩基)
塩基HSO4⁻の孤立電子対がsp3炭素C4のH15を引き抜き(C)、C4–H15の結合電子が環に戻ってC3–C4のπを再生する(B)=芳香族性が回復する。これでニトロベンゼンが完成し、硫酸が再生する(触媒)。脱プロトンは速い(律速でない)。
なぜこう進むのか
- 原理
- 求電子置換は『電子の豊富な芳香環が、強い求電子剤を攻める』の一語に尽きる。混酸(HNO3+H2SO4)の役目は、弱い求電子剤の硝酸から、強力で直線形の求電子剤ニトロニウムイオン NO2⁺ を作り出すこと。NO2⁺ さえ出来れば、あとは付加→脱プロトンの2段で芳香族性が壊れて戻る。
- 選択性
- ベンゼンは置換基を持たないので位置選択性は問題にならない(6つの位置が等価)。一置換体ニトロベンゼンが主生成物で、過剰のNO2⁺・高温では二ニトロ化(m体)まで進みうるが、本反応は温度を抑えて一置換で止める。
- 駆動力
- 律速はNO2⁺が環に付く段(芳香族性〔約150 kJ/mol〕を一時的に失う山)。脱プロトンで芳香族性が回復してエネルギーが大きく下がるのが駆動力。H2SO4は反応で消費されず再生する触媒。
検算
この機構は機械検算を通過しています。
原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。
検算の内訳を見る
| 矢印⇄結合変化の整合 | 整合 | fail=0 / check=0(全4段) |
|---|---|---|
| 電荷保存 | 保存 | 全段で電荷保存 |
| 中間体の鎖の連続 | 連続 | 中間体の鎖が連続 |
| 生成物への到達(内部整合) | 到達 | 看板の生成物が機構の終着点に一致 |
| 生成物の分子式 | C6H5NO2 | |
| PubChem 照合 | 緑・完全一致 | 完全一致(CID 7416) nitrobenzene |