SN1 Reaction
SN1反応の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)
SN1置換(土台の最小例):tert-ブチルブロミド+水 → tert-ブチルアルコール+HBr。3級炭素なのでイオン化してカルボカチオンを経る二段階置換
全体式
反応機構(段ごと)
中心炭素C1と臭素Br5の結合電子が、電気陰性度の大きい臭素Br5の側へまるごと移り、C1–Br5結合が切れる(B, 脱離矢印)。臭素は電子を1対持って臭化物イオンBr⁻として抜け、C1は電子が足りない3級カルボカチオン(C⁺)になる。ここが一番遅い律速段。
Q.なぜ臭素が電子を持って抜けられるのか
A.臭素は電気陰性度が大きく、抜けたあと負電荷(Br⁻)を安定に抱えられる良い脱離基だから。加えて残る炭素側が安定な3級カルボカチオンになれるので、この開裂が起こりやすい。
水の酸素O6の孤立電子対が、電子の足りないカルボカチオンの炭素C1(求電子剤)へ差し出され、新しいC1–O6結合ができる(A)。酸素が結合を1本余分に持つので、酸素上に正電荷が乗ったオキソニウム(プロトン化アルコール、–OH2⁺)になる。
Q.なぜ水がここを攻めるのか
A.C1が正電荷を持って電子が足りない一番狙われやすい点(求電子剤)で、水は孤立電子対を持つ電子の余った求核剤だから。電子の余った側が足りない側を攻める、というこの一手で結合ができる。
臭化物イオンBr⁻(塩基)が、オキソニウムO6⁺の上のプロトンH8を引き抜き(C)、O6–H8の結合電子が酸素O6へ戻る(B)。酸素の正電荷が消えて中性のtert-ブチルアルコール(–OH)になり、抜けたプロトンはBr⁻と結んでHBrになる。
Q.なぜ最後にプロトンが抜けるのか
A.オキソニウム(–OH2⁺)は酸素上に正電荷が乗って不安定で、プロトンを1つ手放せば中性の安定なアルコールになれるから。塩基がそのプロトンを受け取る酸・塩基の一手で反応が完結する。
なぜこう進むのか
- 原理
- Q.SN1はどんな反応か
A.まず脱離基が電子を持って抜け(イオン化)、いったんカルボカチオン(炭素上に正電荷を持つ陽イオン)ができ、そこへ求核剤が付く二段階の置換。結合が切れるのと新しい結合ができるのが同時ではなく、別々の段で起こるのが特徴。 - 選択性
- Q.なぜtert-ブチル(3級)だとSN1で進むのか
A.できるカルボカチオンが3級(正電荷の炭素に炭素が3つ付く)だから安定で、イオン化が起こりやすいから。まわりの炭素・水素が正電荷へ電子を押し出して支えるので、3級>2級>1級の順に陽イオンが安定になる。 - 駆動力
- Q.なぜこの反応は進むのか
A.3級カルボカチオンが安定なので律速のイオン化を越えられ、そのあと電子の余った水(求核剤)が電子の足りない陽イオン(求電子剤)を攻めて安定な中性のアルコールに落ち着くから。
検算
この機構は機械検算を通過しています。
原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。
検算の内訳を見る
| 矢印⇄結合変化の整合 | 整合 | fail=0 / check=0(全3段) |
|---|---|---|
| 電荷保存 | 保存 | 全段で電荷保存 |
| 中間体の鎖の連続 | 連続 | 中間体の鎖が連続 |
| 生成物への到達(内部整合) | 到達 | 看板の生成物が機構の終着点に一致 |
| 生成物の分子式 | C4H10O | |
| PubChem 照合 | 緑・完全一致 | 完全一致(CID 6386) 2-methylpropan-2-ol |