Moleculusモレキュラス 一覧 / SN2反応

SN2 Reaction

SN2反応の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)

SN2置換(土台の最小例):ブロモメタン CH3Br + 水酸化物イオン OH⁻ → メタノール CH3OH + 臭化物イオン Br⁻。求核剤OH⁻が炭素を背面から攻め、同時に脱離基Br⁻が抜ける1段の反応。

全体式

+

反応機構(段ごと)

段 1
背面攻撃と脱離(協奏的な置換・1段)
試薬・条件: OH⁻(求核剤)
1234567

水酸化物イオンの酸素O3の孤立電子対が、電子の薄い炭素C1(臭素に電子を引かれてδ+)を背面から攻撃して新しいC1–O3結合を作る(A)。それと同時に、玉突きでC1–Br2の結合電子が丸ごと臭素Br2へ移り、Br⁻が脱離する(B, 脱離矢印)。攻撃と脱離が別々の段に分かれず1段で同時に起こるのがSN2で、中間体はできない。生成物はメタノール CH3OH と臭化物イオン Br⁻。

Q.なぜ臭化物イオン Br⁻ は良い脱離基なのか

A.脱離基は抜けた後が安定なほど良い。Br⁻の共役酸である臭化水素HBrはとても強い酸(pKaは約−9)で、これはBr⁻が負電荷を安定に抱えられる=もともとHを手放しやすいことを意味する。臭素は電気陰性度が強いので結合電子を丸ごと引き受けても平気で、だからBr⁻はよく抜ける良い脱離基になる。

なぜこう進むのか

原理
SN2は『求核剤が炭素を攻める』と『脱離基が抜ける』が別々の段に分かれず、同じ1段で同時に起こる(協奏)。求核剤OH⁻は電子が余っている側なので、電子が薄い炭素(δ+)へ孤立電子対を差し出して新しい結合を作る。ちょうどその裏側で、炭素と臭素をつないでいた結合の電子が丸ごと臭素へ移り、Br⁻が抜ける。攻めと脱離が押し引きで釣り合うので、中間体を作らずに一気に置き換わる。
選択性
Q.なぜ求核剤は臭素と反対側(背面)から攻めるのか
A.臭素が抜けていく方向とは反対側から電子対を差し込むと、入ってくる結合と出ていく結合が炭素をはさんで一直線に並び、押し引きが最もスムーズになるから。同じ側から攻めると、抜けかけの臭素とぶつかって邪魔になる。だから求核剤は必ず脱離基の背面から入る。
駆動力
電子が余った求核剤OH⁻が電子の薄い炭素(δ+)を攻めるという有機反応の基本の一手に加え、抜けた後に安定でいられる良い脱離基Br⁻が出ていくことで反応が進む。臭素は電気陰性度が強く、結合電子を丸ごと抱えて負電荷を安定に持てるので、抜けやすい良い脱離基になる。

検算

この機構は機械検算を通過しています。

原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。

検算の内訳を見る
矢印⇄結合変化の整合整合fail=0 / check=0(全1段)
電荷保存保存全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達看板の生成物が機構の終着点に一致
生成物の分子式CH4O
PubChem 照合緑・完全一致完全一致(CID 887)
methanol
← 反応一覧にもどる