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Wittig Reaction

ウィッティヒ反応の反応機構(巻矢印つき・機械検算済み)

Wittig反応(不安定イリド):Ph3P+CH3Br→ホスホニウム塩→塩基でイリドPh3P=CH2→ベンズアルデヒドに付加(ベタイン→オキサホスフェタン)→スチレン+Ph3P=O

全体式

+ +

反応機構(段ごと)

段 1
ホスホニウム塩の生成(Ph3PのSN2)
試薬・条件: CH3Br
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トリフェニルホスフィンのリンP1の孤立電子対が、ブロモメタンの炭素C20を裏側から攻撃して新しいP1–C20結合を作る(A)。玉突きでC20–Br21の結合電子が臭素Br21へ抜けて、臭化物イオン Br⁻ が脱離する(B)。SN2でメチルトリフェニルホスホニウム塩(Ph3P⁺–CH3, Br⁻)ができる。リンは孤立電子対を持つ求核剤で、CH3Brは良い脱離基Brを持つので付加が進む。

Q.なぜリンが炭素を攻撃できるのか

A.リンは孤立電子対を1つ持ち、周期表で下のほうにあって電子を出しやすい(分極しやすい)良い求核剤だから。その電子対がCH3Brの炭素を裏側から攻めて、脱離基のBr⁻を押し出す典型的なSN2になる。

段 2
塩基による脱プロトン(リンイリドの生成)
試薬・条件: BuLi(強塩基)
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強塩基(ブチルリチウムのカルバニオンC30)がホスホニウム塩のリンに隣接した炭素C20上のプロトンH22を引き抜く(C)。玉突きでC20–H22の結合電子がP1–C20の間に入ってP1=C20の二重結合を作る(B)。リンイリド Ph3P=CH2(=Ph3P⁺–CH2⁻ の共鳴で書ける双性イオン、Wittig試薬)ができ、ブタンが副生する。

Q.なぜリンの隣の炭素のプロトンが抜けやすいのか

A.抜けた後に残る負電荷(カルバニオン)を、隣の正電荷のリン(P⁺)が Ph3P⁺–CH2⁻ ↔ Ph3P=CH2 の共鳴で安定化できるから。負電荷を安定化できる位置のプロトンは酸性が高く、強塩基で抜ける。

段 3
イリドの炭素がベンズアルデヒドのカルボニルを攻撃(ベタイン)
試薬・条件: PhCHO(ベンズアルデヒド)
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イリドのP1=C20二重結合(カルバニオン性の炭素C20)が、ベンズアルデヒドのカルボニル炭素C40を攻撃して新しいC20–C40結合を作る(A)。玉突きでC40=O41のπ電子が酸素O41へ降りてアルコキシド(O⁻)になる(B)。リンは正電荷(P⁺)、酸素は負電荷(O⁻)の双性イオン=ベタインになる。

Q.なぜイリドの炭素が求核剤になれるのか

A.イリドは Ph3P⁺–CH2⁻ ↔ Ph3P=CH2 の共鳴で、炭素に高い電子密度(カルバニオン性)を持つから。隣のリンが正電荷を安定化し、その炭素がカルボニル炭素への求核剤になる。

段 4
ベタインが閉環してオキサホスフェタン(P–O結合形成)
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ベタインのアルコキシド酸素O41⁻の孤立電子対が、正電荷を帯びたリンP⁺1を攻撃して新しいO41–P1結合を作る(A)。四員環(P1–C20–C40–O41)のオキサホスフェタンが閉環する。リンは5価の中性になり、双性イオンの電荷が消える。

段 5
[2+2]逆開裂:スチレン+Ph3P=O
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四員環が[2+2]逆開裂で同時に2本切れる。P1–C20結合の電子がC20=C40の二重結合を作りに行き(B)、C40–O41結合の電子がP1=O41の二重結合を作りに行く(B)。アルケン(スチレン CH2=CH–Ph)と、非常に安定なトリフェニルホスフィンオキシド Ph3P=O に分かれて反応が完成する。できる二重結合の一端が =CH2 なのでE/Zの区別は生じない。

Q.なぜ一気に分かれるのか(駆動力)

A.生成するP=O結合が非常に強く安定だから。四員環のひずみ解消と、強いP=O結合の生成が、[2+2]逆開裂を不可逆に駆動する。

なぜこう進むのか

原理
Wittig反応はカルボニルのC=OをC=Cに置き換える炭素–炭素二重結合の作り方。まずトリフェニルホスフィン Ph3P がハロゲン化アルキル CH3Br を SN2 で攻めてホスホニウム塩(Ph3P⁺–CH3)を作り、塩基が隣の炭素のプロトンを抜いて『リンイリド』Ph3P=CH2(=Wittig試薬)にする。このイリドの炭素(カルバニオン性)がアルデヒドのカルボニル炭素を攻撃し、ベタイン→四員環オキサホスフェタン(P–O結合ができる)を経て、[2+2]逆開裂でアルケンとトリフェニルホスフィンオキシド Ph3P=O に分かれる。今回はCH2イリド(Ph3P=CH2)なので、できるアルケンは末端の =CH2 で、E/Zの立体異性の問題は起きない(スチレンの二重結合の片方が同じH2つ)。
選択性
Q.このWittig反応ではなぜE/Z(シス・トランス)を気にしなくてよいのか
A.イリドが Ph3P=CH2(メチレンイリド)で、アルデヒド側の炭素と結ぶ新しい二重結合の一端が CH2(同じ水素が2つ)だから。二重結合の片側で置換基が2つとも同じHのときは、シス・トランスの区別そのものが生じない。だから不安定イリド一般で問題になるZ選択性の議論が、この最も素直な例では要らない。
駆動力
非常に強いP=O結合(Ph3P=O)の生成が最大の駆動力。四員環オキサホスフェタンの[2+2]逆開裂で、安定なP=Oとアルケンが一気に生じる方向へ不可逆に進む。前段のイリド生成も、リン上の正電荷が隣の炭素のカルバニオンを安定化するので進みやすい。

検算

この機構は機械検算を通過しています。

原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械検証済み。経路の妥当性は複数ありうる。

検算の内訳を見る
矢印⇄結合変化の整合整合fail=0 / check=0(全5段)
電荷保存保存全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達看板の生成物が機構の終着点に一致
生成物の分子式C8H8
PubChem 照合緑・完全一致完全一致(CID 7501)
styrene
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