Moleculus
有機化学リファレンス

E2脱離

E2脱離

E2脱離(ザイツェフ則):2-ブロモブタン CH3CHBrCH2CH3 + ナトリウムエトキシド NaOEt(EtOH中)→ (E)-2-ブテン + エタノール + 臭化物イオン Br⁻。塩基がβ水素を引き抜き・二重結合ができ・臭素が抜ける、この3つが同じ1段で同時に起こる(協奏)脱離反応。より置換の多い2-ブテンが主生成物になる(ザイツェフ則)。

全体式

出発物から生成物へ

+
基本形 General Form

反応の基本形

H–CR₂–CR'₂–X + B⁻ → R₂C=CR'₂ + B–H + X⁻

強塩基・加熱、H と X がアンチペリプラナー脱離(E2)

塩基によるβ水素の引き抜き・π形成・脱離基の脱離が1段で協奏的に起こり、多置換アルケン(ザイツェフ則)を主に与える脱離である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

協奏的なE2脱離(β水素引き抜き・π形成・Br脱離が1段)

試薬・条件EtO⁻(NaOEt・強塩基)

123456789
生成物(完成)
123456789

エトキシドO6の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。が、臭素の隣(β位)の炭素C3についた水素H7を奪う(C)。それと同時に、C3–H7の結合電子がC2とC3のあいだに降りてきてC2=C3の二重結合をつくり(B)、玉突きでC2–Br5の結合電子が丸ごと臭素Br5へ移ってBr⁻が脱離する(B, 脱離矢印)。引き抜き・π形成・脱離が別々の段に分かれず1段で同時に起こるのがE2で、カルボカチオン炭素の上に正電荷を持つ、電子が足りず不安定な中間体。置換基の多い3級ほど安定になる。のような中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。はできない。β水素はC1のメチルにもあるが、より置換の多い(安定な)2-ブテンを与えるC3側が抜けるのがザイツェフ則脱離反応では、二重結合の置換基が多い、より安定なアルケンが主生成物になる経験則。。抜けるH7と脱離するBr5が炭素をはさんで反対側(アンチペリプラナー・二面角180°)に並ぶ配座を通り、2つのメチルが二重結合の反対側にくるE体が主に得られる。生成物は (E)-2-ブテン、エタノール(O6がH7を受け取って中性化)、臭化物イオン Br⁻。

Q.なぜ引き抜かれるβ水素H7と脱離するBr5は炭素をはさんで反対側(アンチペリプラナー)に並ぶ必要があるのか

A.C3–H7の結合電子は、切れながらそのままC2=C3のπ結合になる。このπ結合はC2–C3軸に垂直な向きに広がるので、抜けるH7が持っていた電子雲と、C2–Br5が切れて空いていく側の軌道が、C2–C3軸をはさんで一直線(反対側)に重なっていると押し引きがなめらかにつながる。同じ側(シンペリプラナー)だと軌道の重なりが悪く不利。だからH7とBr5は二面角180°のアンチで並ぶ配座を通り、この幾何が生成アルケンのE/Z二重結合が回れないために生じる、置換基の並び(シス・トランス)の違い。まで決める。

考察

なぜこう進むのか

原理
E2は『塩基がβ水素を引き抜く』『C=Cの二重結合ができる』『脱離基結合の電子対を持ったまま分子から抜けていく原子や原子団。抜けたあと安定なほど良い脱離基となる。Br⁻が抜ける』の3つが、中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。をはさまず同じ1段で同時に起こる脱離反応。エトキシド EtO⁻ は電子が余った塩基で、臭素の隣(β位)の炭素についた水素を奪う。その水素が持っていた結合電子はそのまま炭素間へ移って二重結合をつくり、玉突きで炭素と臭素の結合電子が丸ごと臭素へ移ってBr⁻が抜ける。引き抜き・π形成・脱離が押し引きで一直線につながるので、カルボカチオン炭素の上に正電荷を持つ、電子が足りず不安定な中間体。置換基の多い3級ほど安定になる。のような中間体を作らずに一気にアルケンができる。反応速度が『基質の濃度』と『塩基の濃度』の両方に比例する(二次反応)ことがE2(2は二分子的の意味)の名の由来。
選択性
Q.β水素は2か所(C1側のメチルとC3側のCH2)にあるのに、なぜC3側が抜けて2-ブテンが主生成物になるのか(ザイツェフ則脱離反応では、二重結合の置換基が多い、より安定なアルケンが主生成物になる経験則。)。また、なぜE体が主に得られるのか
A.2-ブロモブタンの臭素はC2についていて、その両隣(β位)はC1のメチルとC3のCH2の2か所。C1の水素が抜けると末端の1-ブテン(一置換=二重結合の炭素についた炭素置換基が計1つ)ができ、C3の水素が抜けると2-ブテン(二置換=二重結合の両炭素に炭素置換基が1つずつで計2つの、より内部の置換の多いアルケン)ができる。より置換の多いアルケンは二重結合まわりの炭素からの電子的な安定化(超共役隣のC–H結合の電子が、空いた軌道や正電荷へわずかに供与して安定化するはたらき。)を多く受けて安定なので、こちらが主生成物になる=ザイツェフ則。さらにE2は、抜けるβ水素と脱離するBrが二面角180°で反対側に並ぶ(アンチペリプラナー)配座を通る。この配座で2つのメチル基(C1側とC4側)が互いに離れて並ぶ側のほうが立体的に混み合わず有利なので、2つのメチルが二重結合をはさんで反対側にくるE(トランス)体が主に得られる。
駆動力
電子が余った強塩基エトキシドが酸性のβ水素を奪えること、π結合が1本できて系が安定化すること、そして抜けたあと負電荷を安定に抱えられる良い脱離基Br⁻が出ていくことで反応が進む。臭素は電気陰性度結合の電子対を引き寄せる強さの尺度。大きい原子ほど電子を引き、分極を生む。が強く結合電子を丸ごと引き受けても平気なので、よく抜ける脱離基になる。E2はカルボカチオン中間体を経ないので、転位結合や原子団が分子内で移動して、炭素骨格などが組み替わる過程。や置換(SN1)といった寄り道が起きにくいのも特徴。かさ高くない2級ハロゲン化物に強塩基を効かせる典型的な脱離条件。
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検算 Verified

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検算とは何か — 保証していないことも

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矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全1段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C4H8
PubChem 照合未照合 — キャッシュに結果なし
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