Moleculus
有機化学リファレンス

Electrophilic Aromatic Bromination

芳香族求電子置換

芳香族求電子置換:ニトロベンゼンの臭素化(Br2/FeBr3)→ m-ブロモニトロベンゼン(メタ配向)

全体式

出発物から生成物へ

+ +
基本形 General Form

反応の基本形

Ar–H + Br₂ → Ar–Br + HBr

Br₂・ルイス酸触媒(FeBr₃, FeCl₃)芳香族求電子置換(ハロゲン化)

ルイス酸で活性化したBr⁺等価体が芳香環を攻め、脱プロトンで芳香族性が戻る求電子置換である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

Br2の活性化:FeBr3がBr⁺を引き出す

試薬・条件FeBr3(ルイス酸)

202130313233
この段のあと
202130313233

ルイス酸電子対を受け取る側の酸。空いた軌道を持ち、相手の孤立電子対を迎え入れる。FeBr3の空のFeに、Br2の片方の臭素Br21の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。が配位して新しいFe30–Br21結合を作る(A)。玉突きでBr20–Br21結合の電子がBr21(と鉄)側へ移り(B)、Br–Br結合が不均等開裂して求電子剤電子が足りず、電子の余った相手(求核剤)から電子対を受け取る側の化学種。 Br⁺(Br20)と四臭化鉄イオン[FeBr4]⁻が生じる。Br⁺が実際の求電子剤の本体。

Step2

求電子付加:アレニウム(Wheland)中間体の生成(メタ位・律速)

試薬・条件Br⁺

1234567892022
この段のあと
1234567892022

ニトロベンゼンの環π電子(C6=C7)が求電子剤電子が足りず、電子の余った相手(求核剤)から電子対を受け取る側の化学種。Br⁺(Br20)を攻撃して新しいC6–Br20結合を作る(A)。C6はsp3になり、玉突きで正電荷が環上に移ってアレニウム(シクロヘキサジエニル陽イオン)になる。ここではメタ位C6で付加が起きており、正電荷はC7(オルト)・C5/C9側へ乗るがNO2結合炭素C4には乗らない(=メタが有利な理由)。芳香族性環状で平面のπ電子系が、規則を満たして特別に安定になる性質。を壊すこの段が律速。

Q.なぜC4(NO2の付いた炭素)に正電荷が乗らないようメタで付加するのか

A.アレニウムの正電荷は付加点のオルト・パラ炭素に分散する。オルト/パラ位で付加するとNO2結合炭素C4に+が乗る共鳴構造1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。が現れ、電子求引基の隣の+=著しく不安定。メタ位(C6)で付加すればC4に+が乗る共鳴を回避でき、最も安定なアレニウムを通る。

Step3

脱プロトンで再芳香族化(m-ブロモニトロベンゼン)

試薬・条件[FeBr4]⁻(Br⁻が塩基)

123456789202230
生成物(完成)
123456789202230

塩基Br⁻(Br30)がsp3炭素C6のH22を引き抜き(C)、C6–H22の結合電子が環に戻ってC6=C7のπを再生する(B)=芳香族性環状で平面のπ電子系が、規則を満たして特別に安定になる性質。が回復する。これでm-ブロモニトロベンゼンが完成し、HBrが生じてFeBr3が再生する(触媒反応を速めるが、自身は反応の前後で消費されず再生される物質。)。脱プロトン分子が水素イオン(H⁺)を塩基に引き抜かれて手放す操作。プロトン化の逆である。は速い(律速でない)。

考察

なぜこう進むのか

原理
選択性
Q.なぜ臭素はメタ位(NO2に対して3位)に入るのか
A.NO2 は強い電子求引基で不活性化・メタ配向基。求電子付加アルケンのπ電子が求電子剤を攻め、二重結合が開いて2つの基が付く反応。でできるアレニウム(シクロヘキサジエニル陽イオン)の正電荷は、付加点に対してオルト・パラの炭素に乗る。もしオルト/パラ位で付加するとNO2の結合炭素に正電荷が乗る共鳴構造1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。が現れ、電子求引基の真隣に+=極めて不安定になる。メタ位で付加すればNO2結合炭素に+が乗る共鳴を回避でき、相対的に安定なアレニウムを通る。だから3つの異性体のうちメタが優先する。
駆動力
律速はBr⁺が環に付く段(芳香族性〔約150 kJ/mol〕を一時的に失う山)。脱プロトンで芳香族性が回復してエネルギーが大きく下がるのが駆動力。FeBr3 は HBr を出して再生する触媒反応を速めるが、自身は反応の前後で消費されず再生される物質。
関連 Related

近い反応・対になる反応

同じ中間体・対になる選択性・連続する変換など、位置の近い反応です。反応マップで全体の中での位置も見られます。

反応マップでこの周辺を見る →

検算 Verified

機構の正しさを機械で確かめる

この機構は機械検算を通過しています。

原子の保存・電子の流れ・生成物への到達を機械で検証しています。妥当な経路は複数ありえます。

検算とは何か — 保証していないことも

検算の内訳を見る
矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全3段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C6H4BrNO2
PubChem 照合未照合 — キャッシュに結果なし
← 反応一覧にもどる