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有機化学リファレンス

アルケンのエポキシ化

アルケンのエポキシ化

アルケンのエポキシ化(mCPBA・協奏):シクロヘキセン + mCPBA(m-クロロ過安息香酸)→ シクロヘキセンオキシド + m-クロロ安息香酸。過酸 Ar-CO-O-O-H の末端酸素が、電子豊富なアルケンの二重結合に片面から一度に渡り、三員環エーテル(エポキシド)ができる。バタフライ(蝶)型の遷移状態を通る協奏一段の反応で、酸素はアルケンと同じ面に付く(syn付加)ので二重結合の幾何が生成物に保持される立体特異的な酸化。

全体式

出発物から生成物へ

+
機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

バタフライ型遷移状態を通る協奏的酸素移動(syn付加・エポキシド生成)

試薬・条件mCPBA(m-クロロ過安息香酸)

123456789101112131415161718
生成物(完成)
123456789101112131415161718

過酸mCPBAの末端酸素O7(O–O–Hの外側の酸素)がアルケンに一度に渡る協奏一段。6本の矢印が同時に環状に動く。まず電子豊富なシクロヘキセンの二重結合C1=C2のπ電子が、弱いO7–O9結合で求電子的になっている末端酸素O7を攻撃して新しいC1–O7結合を作る(A)。同時に、O7の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がもう一方のアルケン炭素C2にも結合を作り(A)、O7がC1・C2の両方に橋を架けた三員環=エポキシドになる。玉突きで弱いO7–O9結合が切れ、その電子が隣のC10–O9間へ降りて新しいC10=O9二重結合(カルボン酸の新しいカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。)を作る(B)。押し出されるように、もとのカルボニルC10=O11のπ電子は酸素O11へ移り(B)、電子の増えたO11の孤立電子対が末端酸素上のプロトンH8を受け取る(C)。抜けたO7–H8の結合電子はO7へ戻って孤立電子対になる(B)。結果、酸素O7がアルケンの同じ面へ一度に渡ってシクロヘキセンオキシドができ、過酸は中性のm-クロロ安息香酸(O11–H8のヒドロキシとC10=O9のカルボニル)として外れる。カチオン・ラジカル不対電子を1つ持つ、反応性の高い化学種。電荷を持たないことが多い。中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。を経ないので、O7はC1・C2の片面から同時に付き、二重結合の幾何が保持される(syn付加)。

Q.なぜ中間体を経ず協奏一段で進み、酸素がアルケンの同じ面(syn)に付くのか。なぜ末端の酸素O7が渡るのか

A.遷移状態結合が切れかけ・できかけの、エネルギーが最も高い一瞬の状態。取り出すことはできない。がバタフライ(蝶)型で、過酸の面がアルケンのπ面にほぼ垂直に重なり、末端酸素O7が二重結合C1=C2の真上から両炭素に同時に近づくため。電子豊富なアルケンのHOMO(π)が過酸の弱いO7–O9結合のσ*(LUMO)へ電子を流し込みながら、O7がC1とC2に一度に結合するので、C1–O7とC2–O7は必ず同じ面にできる。開いたカルボカチオン炭素の上に正電荷を持つ、電子が足りず不安定な中間体。置換基の多い3級ほど安定になる。やラジカルの中間体を作らないから、途中でC–C結合が回転して幾何が崩れる余地がなく、アルケンのcis/transの関係がそのまま生成物に写る立体特異的出発物の立体配置に応じて、生成物の立体が一義的に決まる性質。反応になる(syn付加)。渡るのが末端酸素O7なのは、そこが弱いO7–O9結合の外側にあって最も求電子的な酸素であり、そこが抜けたあとに残る過酸側が、プロトンを受け取って安定な中性のm-クロロ安息香酸(共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。安定なカルボキシル基)にきれいに落ち着けるから。シクロヘキセンでは環が二重結合をcisに固定しているので、片面付加でcis縮環のシクロヘキセンオキシド(アキラル重ね合わせられない鏡像の関係にある一対の分子。キラルな分子で生じる。なmeso体)が一義的にできる。

考察

なぜこう進むのか

原理
過酸のエポキシ化は、弱いO–O結合をもつ末端酸素を『中性のO原子源』としてアルケンの二重結合に渡す協奏反応。遷移状態結合が切れかけ・できかけの、エネルギーが最も高い一瞬の状態。取り出すことはできない。はバタフライ型(過酸の面がアルケンのπ面にほぼ垂直に重なり、末端酸素が二重結合の両炭素の真上から同時に近づく蝶の形)で、6本の電子の流れが一巡する。電子豊富なアルケンのπ電子が末端酸素を攻め、その酸素が両方のアルケン炭素に一度に橋を架けてエポキシドになる。同時に弱いO–O結合が切れ、その電子が隣の炭素へ降りて新しいカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。(C=O)を作り、末端酸素の上にあったプロトンがもとのカルボニル酸素へ移って、脱離種がそのまま中性のm-クロロ安息香酸になる。中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。(カチオン・ラジカル不対電子を1つ持つ、反応性の高い化学種。電荷を持たないことが多い。)を一切経ない1段の反応。なお、同じmCPBAがケトンのカルボニル炭素に付加するとBaeyer–Villiger酸化(C–C結合間へのO挿入でエステル/ラクトン)になる。エポキシ化はその過酸がπ結合(アルケン)へ酸素を渡す姉妹反応で、どちらも『弱いO–O結合が切れて安定なカルボン酸が抜ける』のが共通の駆動力。
選択性
Q.なぜ酸素はアルケンの同じ面から入る(syn付加)のか=なぜ二重結合の幾何が生成物に保たれるのか
A.末端酸素O7が二重結合C1=C2の片面の真上から近づき、C1–O7とC2–O7の2本の結合を1段で同時に作るから。開いたカルボカチオン炭素の上に正電荷を持つ、電子が足りず不安定な中間体。置換基の多い3級ほど安定になる。やラジカルの中間体を経ないので、途中でC–C結合が回転して立体が崩れる余地がなく、反応前のアルケンのcis/transの関係がそのまま生成物のエポキシドに写る(立体特異的出発物の立体配置に応じて、生成物の立体が一義的に決まる性質。)。シクロヘキセンでは環が二重結合をcisに固定しているので、片面付加でcis縮環のシクロヘキセンオキシド(対称面をもつアキラル重ね合わせられない鏡像の関係にある一対の分子。キラルな分子で生じる。なmeso体)が一義的にできる。もし基質が鎖状のcis-/trans-アルケンなら、同じsyn付加でも両者は別々のジアステレオマーのエポキシドを与える=アルケンの幾何が生成物の立体を決める。電子豊富な(置換の多い)アルケンほど速く反応するのは、アルケンが求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。として過酸の弱いO–O結合を攻めるため。
駆動力
過酸のO–O結合が弱く(結合エネルギーが小さく)切れやすいことが第一。反応全体では、弱いπ結合(C=C)1本と弱いO–O結合1本が、強いC–O結合2本(エポキシド)と、共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。安定なカルボン酸のO–H・C=Oへ組み替わるのでエネルギー的に下り坂になる。脱離種が安定な中性のm-クロロ安息香酸(電子求引性のm-Cl置換基が酸性度を上げ、より良い脱離能を与える)である点も後押しになる。
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同じ中間体・対になる選択性・連続する変換など、位置の近い反応です。反応マップで全体の中での位置も見られます。

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検算とは何か — 保証していないことも

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矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全1段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C6H10O
PubChem 照合緑・完全一致(CID 9246)
7-oxabicyclo[4.1.0]heptane
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