Moleculus
有機化学リファレンス

Friedel-Crafts Acylation

Friedel–Craftsアシル化

Friedel–Craftsアシル化:ベンゼン+塩化アセチル(AlCl3)→ アセトフェノン。ルイス酸AlCl3が塩化アセチルの塩素を引き抜いてアシリウムイオン CH3C≡O⁺ を作り、電子豊富なベンゼン環がこれを攻撃してアレニウム中間体を経てアセチル基(ケトン)を導入する芳香族求電子置換(付加–脱離)。

全体式

出発物から生成物へ

+ +
基本形 General Form

反応の基本形

Ar–H + R–COCl → Ar–CO–R + HCl

ハロゲン化アシル・ルイス酸(AlCl₃)芳香族求電子置換(Friedel–Crafts アシル化)

ルイス酸が作るアシリウムイオンが芳香環を攻め、ケトン(アシル基)を導入する求電子置換である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

アシリウム生成:AlCl3が塩化アセチルを活性化

試薬・条件AlCl3(ルイス酸)

2021222330313233
この段のあと
2021222330313233

ルイス酸電子対を受け取る側の酸。空いた軌道を持ち、相手の孤立電子対を迎え入れる。AlCl3のAl30が塩化アセチルの塩素Cl23の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。を受け取り、新しいAl30–Cl23結合を作る(A)。玉突きでC20–Cl23結合の電子がCl23へ移り、塩素がテトラクロロアルミナートAlCl4⁻として抜ける(B, 脱離矢印)。アシル炭素C20が正電荷を帯びたアシリウムイオン CH3C≡O⁺ になる(正電荷を酸素O21の孤立電子対が受け止めるオキソカルベニウム共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。で安定)。

Q.なぜAlCl3が要るのか

A.塩化アセチルそのものは求電子性が弱く、ベンゼンを攻めきれない。ルイス酸が塩素を引き抜いてアシリウムにすると、正電荷が集中した強い求電子剤電子が足りず、電子の余った相手(求核剤)から電子対を受け取る側の化学種。になり、電子豊富とはいえ反応性の高くないベンゼンでも攻撃できるから。

Step2

求電子付加:ベンゼン環がアシリウムを攻撃(アレニウム・律速)

試薬・条件アシリウムイオン CH3C≡O⁺

12345615202122
この段のあと
12345615202122

ベンゼンの環π電子(C3=C4)がアシリウムの炭素C20を攻撃して新しいC4–C20結合を作る(A)。アシリウムはカルベニウム型で描いており(+がC20・C20=O21は二重結合のまま)、この攻撃でC20が3結合の+から4結合の中性になる(C=O二重結合は保たれるので追加の矢印は要らない)。環は芳香族性環状で平面のπ電子系が、規則を満たして特別に安定になる性質。を失い、正電荷が環炭素C3に乗ったアレニウム(シクロヘキサジエニル陽イオン=Wheland中間体反応の途中で一時的にできる、ある程度の寿命を持つ化学種。遷移状態とは別物である。)になる(C4が新たにsp3)。芳香族性を壊すこの段がEASの律速段反応全体の速さを決める、いちばん遅い段階。ここの越えやすさが反応速度を支配する。

Q.なぜアシリウム側に2本目の矢印が要らないのか

A.求電子剤電子が足りず、電子の余った相手(求核剤)から電子対を受け取る側の化学種。のアシリウムはカルベニウム型で描くと炭素C20に空のp軌道を持つ陽イオン(3結合+)。ニトロ化のNO2⁺のように内部のπを組み替える必要がなく、環のπがそのまま空軌道へ入って新結合を作り、C20が中性になるだけなので1本の矢印で済む。C20=O21の二重結合はそのまま保たれる。

Step3

脱プロトンで再芳香族化(アセトフェノン完成)

試薬・条件AlCl4⁻由来の塩基(Cl⁻)

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生成物(完成)
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塩基の塩化物イオンCl23⁻(AlCl4⁻が放った)がsp3炭素C4上のプロトンH15を引き抜き(C)、C4–H15の結合電子が環に戻ってC3–C4のπを再生する(B)=再芳香族化。芳香環環状で平面のπ電子系が、規則を満たして特別に安定になる性質。が回復してアセチル基が入ったアセトフェノンが完成し、AlCl3が再生してHClが生じる。脱プロトン分子が水素イオン(H⁺)を塩基に引き抜かれて手放す操作。プロトン化の逆である。は速い(律速でない)。

考察

なぜこう進むのか

原理
選択性
Q.なぜアシル化は一置換で止まり、アルキル化と違って転位結合や原子団が分子内で移動して、炭素骨格などが組み替わる過程。も起きないのか
A.2つの理由がアシル化を『きれいな』反応にする。(1) 導入されるアセチル基のカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。C=Oは電子求引性で環を不活性化するため、生成物アセトフェノンは出発物ベンゼンより求電子剤に対して反応しにくい=もう一度アシル化されにくく、一置換で止まる(アルキル基は電子供与で環を活性化するので多置換に流れやすいのと対照的)。(2) 求電子剤のアシリウムは正電荷が酸素の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。で受け止められて安定なので、アルキルカチオンのようなヒドリド電子対を伴った水素(H⁻)。還元剤からカルボニルの炭素へ移って還元する。転位・骨格転位を起こさず、狙った炭素骨格がそのまま入る。
駆動力
律速はアシリウムが環に付いてアレニウムを作る段(芳香族性を一時的に失う山)。アシリウムは強く安定な求電子剤で、電子豊富なベンゼンπが攻撃できる。続く脱プロトンで芳香族性が回復してエネルギーが大きく下がるのが駆動力。機構上はAlCl3が最後に再生する触媒反応を速めるが、自身は反応の前後で消費されず再生される物質。だが、実際のアシル化では生成物ケトンのカルボニル酸素がAlCl3に配位して1当量を捕まえるため、AlCl3は1当量より少し多く必要になる(アルキル化が触媒量で済むのと違う実務上の注意点)。
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矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全3段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C8H8O
PubChem 照合未照合 — キャッシュに結果なし
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