Moleculus
有機化学リファレンス

Markovnikov Addition of HBr

HBrのマルコフニコフ付加

HBrのマルコフニコフ付加:プロペン CH2=CHCH3 + 臭化水素 HBr → 2-ブロモプロパン CH3CHBrCH3。まずアルケンのπ電子がHBrのプロトンを受け取り、より置換の多い炭素上に2級カルボカチオンができる。次にそこへ臭化物イオン Br⁻ が結合して臭化物が完成する2段の求電子付加。水素は水素の多い側の炭素へ、臭素は水素の少ない側の炭素へ付く(マルコフニコフ則)。

全体式

出発物から生成物へ

+
基本形 General Form

反応の基本形

R₂C=CH₂ + H–X → R₂C(X)–CH₃

ハロゲン化水素 HX(HBr など)求電子付加(HX の付加)

アルケンがHXのプロトンを受けて安定な方のカルボカチオンを作り、X⁻が付いてマルコフニコフ生成物を与える求電子付加である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

プロトン化(マルコフニコフ則・2級カルボカチオン生成・律速)

試薬・条件HBr

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この段のあと
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プロペンの二重結合C2=C3のπ電子が求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。としてはたらき、HBrのプロトンH5を末端炭素C3の側で受け取って新しいC3–H5結合をつくる(A)。それと同時に、玉突きでH5–Br6の結合電子が丸ごと臭素Br6へ移り、Br⁻になる(B)。プロトンが末端C3(元から水素が多い側)に付くことで、残る正電荷は内側の炭素C2に乗り、メチル(C1)とC3にはさまれた2級カルボカチオン炭素の上に正電荷を持つ、電子が足りず不安定な中間体。置換基の多い3級ほど安定になる。ができる。ここが反応全体の律速段反応全体の速さを決める、いちばん遅い段階。ここの越えやすさが反応速度を支配する。。生じるのはイソプロピルカチオン (CH3)2CH⁺ と臭化物イオン Br⁻。

Q.なぜプロトンは末端のC3に付き、正電荷はC2側に乗るのか(1級でなく2級カチオンになるのはなぜか)

A.この段が律速なので、どちらの経路を通るかは生じるカルボカチオンの安定性で決まる。プロトンが末端C3に付けば正電荷は内側のC2(両隣に炭素をもつ2級炭素)に乗り、逆にC2に付けば末端C3(片側しか炭素がない1級炭素)に乗る。カルボカチオンは正電荷を負う炭素に隣接する炭素が多いほど、その炭素からの超共役隣のC–H結合の電子が、空いた軌道や正電荷へわずかに供与して安定化するはたらき。誘起効果電気陰性度の差が、σ結合を伝って電子を引っぱる・押す効果。で電子的に助けられて安定になり、2級は1級よりずっと安定。より安定なカチオンへ向かう経路の遷移状態結合が切れかけ・できかけの、エネルギーが最も高い一瞬の状態。取り出すことはできない。も低くて速いので、2級カチオンを与える『プロトンが末端C3へ付く』側が選ばれる(マルコフニコフ則非対称アルケンへのHX付加で、より安定なカルボカチオンができる向きに反応が進む経験則。の中身)。

Step2

臭化物イオンの捕捉(C–Br結合形成)

試薬・条件Br⁻

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生成物(完成)
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第1段で生じた臭化物イオンBr6の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。が、電子の薄い2級カルボカチオン炭素の上に正電荷を持つ、電子が足りず不安定な中間体。置換基の多い3級ほど安定になる。炭素C2を攻撃して新しいC2–Br6結合をつくる(A)。反対符号どうし(Br⁻の−1とカチオンの+1)が結びつくので速やかに閉じ、正電荷が中和されて中性の2-ブロモプロパン CH3CHBrCH3 が完成する。臭素はC2(水素の少ない側の炭素)に付いており、これがマルコフニコフ付加の生成物。

考察

なぜこう進むのか

原理
アルケンへのHBr付加は、電子が余っている二重結合(π電子)が求核剤電子が余っていて、電子の足りない相手(求電子剤)へ電子対を差し出して結合をつくる化学種。、HBrのプロトンが求電子剤電子が足りず、電子の余った相手(求核剤)から電子対を受け取る側の化学種。としてはたらく求電子付加アルケンのπ電子が求電子剤を攻め、二重結合が開いて2つの基が付く反応。。まずπ電子がプロトンを取りにいき、炭素の一方に正電荷が乗ったカルボカチオン炭素の上に正電荷を持つ、電子が足りず不安定な中間体。置換基の多い3級ほど安定になる。と臭化物イオン Br⁻ に分かれる(律速段反応全体の速さを決める、いちばん遅い段階。ここの越えやすさが反応速度を支配する。)。次に、電子が余った Br⁻ が電子の薄いカルボカチオン炭素へ孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。を差し出して結合をつくる。二重結合という『電子が余った場所』と、いったんできたカルボカチオンという『電子が足りない場所』を、プロトンと Br⁻ が順に埋めていく2段の反応。
選択性
Q.プロトンはC2とC3のどちらの炭素に付くのか。なぜ水素は水素の多い側、臭素は水素の少ない側に付くのか(マルコフニコフ則非対称アルケンへのHX付加で、より安定なカルボカチオンができる向きに反応が進む経験則。
A.プロトンの付き先を決めるのは、残る正電荷がどちらの炭素に乗るかで決まる。プロペン CH3-CH=CH2 のうち、プロトンが末端のC3(水素2つ)に付けば正電荷は内側のC2(もう一方の炭素とメチルにはさまれた2級炭素)に乗り、プロトンがC2に付けば正電荷は末端のC3(1級炭素)に乗る。カルボカチオンは、隣の炭素からの電子的な押し(超共役隣のC–H結合の電子が、空いた軌道や正電荷へわずかに供与して安定化するはたらき。誘起効果電気陰性度の差が、σ結合を伝って電子を引っぱる・押す効果。)を多く受けられるほど安定で、2級>1級の順に安定になる。だからより安定な2級カチオンを与える経路、すなわちプロトンが末端C3へ付く側が選ばれる。結果として水素は元から水素の多い炭素(C3)に、臭素は水素の少ない炭素(C2)に付く=マルコフニコフ則。
駆動力
電子が余ったアルケンのπ電子が、HBrの分極電気陰性度の差で結合の電子が偏り、δ+とδ-の部分電荷が生じること。したH(δ+)を求電子剤として攻められること、そして抜けたあと負電荷を安定に抱えられる良い脱離基結合の電子対を持ったまま分子から抜けていく原子や原子団。抜けたあと安定なほど良い脱離基となる。 Br⁻ が生じることで第1段が進む。第2段は、電子が薄いカルボカチオン(+1)と電子が余った Br⁻(−1)という反対符号どうしが結びつく強い駆動力で速やかに閉じる。全体として不安定なカルボカチオンを中性の安定な臭化物に変える方向へ進む。
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検算 Verified

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検算とは何か — 保証していないことも

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矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全2段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C3H7Br
PubChem 照合未照合 — キャッシュに結果なし
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