Moleculus
有機化学リファレンス

Keto-Enol Tautomerization

ケト–エノール互変異性

ケト–エノール互変異性(酸触媒):アセトン CH3COCH3 が酸(H3O⁺)の触媒でエノール形 CH2=C(OH)CH3(プロペン-2-オール)へ移り変わる反応。まずカルボニル酸素がプロトン化されて反応性の高いオキソカルベニウム(プロトン化ケトン)になり、次にα炭素の水素が水に引き抜かれて C=C 二重結合ができ、エノールが生じる2段の反応。ケトとエノールは同じ分子式で、単結合の組み替えとHの移動だけで行き来する構造異性体(互変異性体)。酸は最初にプロトンを渡すが最後に等量ぶん受け取って再生するので触媒としてはたらく。

全体式

出発物から生成物へ

+
基本形 General Form

反応の基本形

R–CO–CH₂R' ⇌ R–C(OH)=CHR'(ケト ⇌ エノール)

酸または塩基触媒互変異性(ケト–エノール)

カルボニルのα水素が移動して、ケト形とエノール形が行き来する互変異性である。

機構 Mechanism

反応機構(段ごと)

巻矢印はA=攻撃 / B=脱離・π形成 / C=プロトン移動。本文の (A)(B)(C) は図中の同色の矢印を指します。

Step1

カルボニル酸素のプロトン化(オキソカルベニウム生成)

試薬・条件H3O⁺

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この段のあと
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アセトンのカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。酸素O2は孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。をもち塩基性。そのO2の孤立電子対がヒドロニウムイオンH3O⁺のプロトンH6を奪って新しいO2–H6結合をつくる(C)。それと同時に、玉突きでO5–H6の結合電子が丸ごと酸素O5へ戻り、中性の水になる(B)。O2がプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。されて結合を3本もつと正電荷を帯び、カルボニル炭素C1へ電子を要求する。この正電荷はC1とO2のあいだで共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。(C1=O2⁺H ↔ C1⁺–O2H)に分散したオキソカルベニウム(プロトン化ケトン)で、電子が引かれるぶんα炭素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。C3・C4のC–Hがはっきり酸性化する。

Q.プロトンを付けただけで反応が進むのか。プロトン化には何の意味があるのか

A.プロトン化そのものは可逆で分子式も変わらないが、狙いはα水素を酸性化して次段の脱プロトン分子が水素イオン(H⁺)を塩基に引き抜かれて手放す操作。プロトン化の逆である。を可能にすることにある。中性のアセトンのままではα–Hの酸性度は低い(pKa約20)が、カルボニル酸素がプロトン化されて正電荷が乗ると、隣接するα炭素のC–H結合の電子が正電荷に強く引かれ、はるかに抜けやすくなる。つまり第1段は、弱い塩基である水でもα水素を引き抜けるように基質を『活性化』する段であり、これが酸触媒酸が反応を助け、最後には再生される仕組み。基質をプロトン化して反応しやすくする。のはたらきの中身。

Step2

α水素の脱プロトン(エノール生成・酸触媒の再生)

試薬・条件H₂O

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生成物(完成)
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第1段でオキソカルベニウムになり、α炭素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。C3のC–H結合(H9)は酸性になっている。弱い塩基である水O5の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がこの酸性なα水素H9を引き抜き(C)、C3–H9の結合電子がC1–C3のあいだに二重結合をつくりに動く(B)。同時に、玉突きでC1=O2⁺のπ電子が酸素O2へ降りて正電荷を中和し、O2は中性の–OHになる(B)。こうしてC3=C1二重結合と–O2H(エノールのヒドロキシ基)をもつエノール CH2=C(OH)CH3 ができる。プロトンを受け取った水O5はヒドロキシ化してヒドロニウムイオン H3O⁺ として再生し、第1段で消費した酸が等量ぶん戻る=酸は触媒反応を速めるが、自身は反応の前後で消費されず再生される物質。

Q.抜けたC–H電子と降りてきたカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。π電子は、それぞれどこへ行ってエノールになるのか

A.α水素H9が抜けたあとに残るC3–H9の結合電子は、行き場としてすぐ隣のC1(正電荷を帯びたオキソカルベニウム炭素)との結合に入り、C3=C1のπ結合になる。その電子が入るとC1は結合を作りすぎるので、押し出されるようにC1=O2⁺のπ電子がO2へ移り、O2の正電荷を中和して中性の–OHになる。結果、もとのカルボニル(C=O)が二重結合の位置をずらしてC=C+O–H(エノール)に組み替わる。α–Hの酸性・生じる二重結合の共役二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。・正電荷の中和が一直線につながっているのがエノール化の要。

考察

なぜこう進むのか

原理
酸触媒酸が反応を助け、最後には再生される仕組み。基質をプロトン化して反応しやすくする。のケト–エノール互変異性プロトンの移動と二重結合の組み替えで、ケト形とエノール形が行き来する現象。は『プロトンを先に付けてから外す』2段で進む。第1段でカルボニル炭素と酸素が二重結合したC=O構造。炭素が電子不足で、求核剤に攻められる。酸素O2の孤立電子対結合に使われず、原子の上に対で残っている非共有の電子対。求核剤として攻める手になる。がプロトンを受け取ると、正電荷がC1側にも乗ったオキソカルベニウム(C⁺–OH ↔ C=O⁺H の共鳴1つの構造式では描き切れない電子の広がりを、複数の極限構造で表す考え方。)になり、α炭素カルボニルの隣(α位)の炭素についた水素。塩基で外れやすく酸性を示す。のC–H結合が強く酸性化する(隣の正電荷が電子を引くため)。第2段で、その酸性化したα水素を水(弱い塩基)が引き抜くと、C–H結合の電子がα炭素とカルボニル炭素のあいだに二重結合をつくり、玉突きでカルボニルのπ電子が酸素へ戻って正電荷が中和され、中性のエノール(C=C–OH)になる。全体として、カルボニル基(C=O+α–H)が、C=C二重結合とO–H(エノール)へと結合を組み替える反応で、酸はプロトンを出し入れするだけで前後の量が変わらない=触媒反応を速めるが、自身は反応の前後で消費されず再生される物質。
選択性
Q.なぜ酸はまず炭素でなく酸素をプロトン化分子が水素イオン(H⁺、プロトン)を1つ受け取る操作。酸性条件でよく起こる。するのか。そしてなぜ引き抜かれるのはα位の水素なのか
A.プロトン化の場所が酸素なのは、カルボニル酸素O2が孤立電子対をもつ最も塩基性の高い部位で、そこに付けば正電荷がC1と共鳴で分散して安定なオキソカルベニウムになるから(炭素へ直接付く経路は安定なカチオンを与えない)。引き抜かれる水素がα位なのは、プロトン化で生じた正電荷に隣接するα炭素のC–H結合が最も酸性で、そこを失えば生じる二重結合がC1のπ系(もとのカルボニル)と一直線につながって共役二重結合と単結合が交互に並び、π電子がひと続きに広がった状態。し、正電荷が中和された中性のエノールに落ち着けるから。カルボニルから離れた水素を失っても、この共鳴・共役の安定化が効かない。
駆動力
各素反応は可逆で、ケトとエノールは平衡で共存する。ただし平衡はケト形に大きく偏り、エノール含量はごくわずか(アセトンではおよそ百万分の一以下のオーダー)である。理由は、ケト形のC=O二重結合がエノール形のC=C二重結合よりずっと強く(O–H結合とあわせても)、ケト側のほうが熱力学的に安定だから。したがってこの互変異性は、単離できる量のエノールを作る反応ではなく、酸触媒でケトとエノールが速く行き来する平衡を敷く過程であり、そのエノールが求電子剤電子が足りず、電子の余った相手(求核剤)から電子対を受け取る側の化学種。(ハロゲン・カルボニル等)と反応するときに反応経路として効いてくる。酸(H3O⁺)は第1段で消費され第2段で再生するので触媒としてはたらく。
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検算 Verified

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検算とは何か — 保証していないことも

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矢印⇄結合変化の整合整合 — fail=0 / check=0(全2段)
電荷保存保存 — 全段で電荷保存
中間体の鎖の連続連続 — 中間体の鎖が連続
生成物への到達(内部整合)到達 — 看板の生成物が機構中で実際に生成
生成物の分子式C3H6O
PubChem 照合未照合 — キャッシュに結果なし
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